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広報立ち上げでおさえたい目標設計とプレスリリース活用法|PR TIMES勉強会

これから広報立ち上げを担当する方や、初めて広報PRに携わる方の中には、「何から始めればいい?」「プレスリリースはどのように活用すればいい?」という悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。

PR TIMESでは2024年2月に、株式会社しんめの代表取締役下村彩紀子さんを講師に迎え、「PR TIMES勉強会 広報立ち上げ編」を開催。

広報の立ち上げからプレスリリース活用まで、さまざまなポイントが詰まった勉強会の内容をPR TIMESの吉田さんからのプレスリリースの書き方解説と合わせてレポートします。

株式会社しんめ 代表取締役/PR

下村 彩紀子(Shimomura Sakiko)

人材メガベンチャーを経て、2019年10月に社員数10人ほどのビビッドガーデン(食べチョク)でPRを立ち上げたのち、広報PRの責任者を担う。2020年度ベストPRパーソン賞を受賞。その後、2023年に株式会社しんめを創業。PRやコミュニケーションのプロフェッショナルと協業しながら、企業や団体の広報・PR活動を支援している。クライアントはIT、不動産、出版、一次産業、食、メーカー、教育など多岐に及ぶ。2023年10月よりプレスリリースエバンジェリストとしても活躍。

広報PRはステークホルダーとの関係づくり

下村さんが考える広報PRの仕事は、「お客さまや投資家、採用候補者、従業員、従業員の家族などステークホルダーとの関係づくり」。

まずは、広報PRがもたらすメリットや取り組みのポイントについての話を伺いました。

「〇〇の会社」と認識されるメリット

広報PRで大切なのは、ステークホルダーに「自社についてどんなイメージを持ってもらいたいのか」をきちんと定義し、社名を伝えただけで「〇〇の会社」と認識してもらえる状態をつくること。実現することでさまざまなメリットを得ることができると下村さんはいいます。

  • 認知が高まることで受注角度や受注単価が上がりやすくなる(購入者や取引先の増加につながることも)
  • 広告を出した場合、受け手が認識するスピードや角度が変わり、効果が上がる
  • 会社のビジョンや事業内容、カルチャーが正しく伝わることで、本当に必要な人からの応募が集まる
  • 家族や友人からの理解が深まり、自社への誇りにつながる(離職率の低下、採用の承諾率の向上につながることも)

一貫性と根拠のある発信

広報PRの目標は、メディア露出や認知度の拡大、受注数増加など企業によってさまざまですが、取り組むうえで大切なことは「一貫性と根拠のある発信を根気よく続けること」と下村さん。

まずは、プレスリリース配信、SNSでの発信、ホームページやオウンドメディアの運営などから自社の発信を強化する取り組みを重ねていくことです。その結果、業界誌に取り上げてもらい、有識者やインフルエンサーが発言してくれるようになり、ラジオや地方テレビ、全国テレビなどにつながっていくというのが理想的な広報PRの広がり方。

最初から大きなメディアを狙っていくのではなく、ネットで検索をしたときに自社の情報にヒットする状態や、業界内で認知されている状態を徐々につくっていくことが大切なのだといいます。

フロー型ではなくストック型

広報PRは「コストを100万円かけたら300万円の価値が返ってくるような広告とは違い、100万円をかけることによってどういう情報を世の中にストックするか」。

広告の場合、数年後に効果が返って来ることはあまりありませんが、広報PRの取り組みはメディア掲載した数年後に、お客さまがその記事をたまたまネットで見かけて新規問合せが入ることも珍しくないそうです。

特に、プレスリリースはインターネット上に情報をストックできるため、「何を資産として残していくかが重要」と話しました。

広報PRの目標設計の進め方

次に、広報PRの目標設計の進め方です。

フェーズに合わせた目標を設計

フェーズによってやるべきことが大きく異なる広報PRの目標設計を見ていきましょう。

土台構築フェーズ
広報PRを実施するための土台を整備することを目指すフェーズ。どんなステークホルダーに、どのように会社を認識してもらいたいのかを統一し、創業理由のストーリーづくりや事業紹介について社内で統一を図る。

量強化フェーズ
ニュースを開発し、定期的な情報発信を目指すフェーズ。プレスリリースやオウンドメディアでの発信、メディア露出などを増やしたり、SNSで発信したり、オフラインのコミュニティづくりなど、届けたいターゲットに合わせた方法を選ぶことがポイント。

指標はアクション・アウトカム・アウトプット

「口コミ(正しい認識)が生まれたかどうか」は短期では成果が見えにくいため、3つの中間指標を設定するとよいと思っています。

  • アクション指標:記者リレーション数、アポイント数、プレスリリース数、取材対応数
  • アウトプット指標:メディア掲載数、想定リーチ数、重点媒体掲載数、狙った文脈での露出、UGCやインプレッション数、投稿内容、プレスリリースPV数
  • アウトカム指標:注文数、問合せ数、指名検索数、滞在時間、認知率、理想とするイメージ率、採用応募者数

上記はあくまで一例ですが、アクション指数の中でも、特に大きな柱となることが多いのがプレスリリース。毎月の配信数はフェーズやビジネスモデルによって変わります。また、メディアリレーションの強化、社内勉強会の定期開催、コンスタントな露出を獲得するための報道資料の送付など、具体的な行動量を目標にするのもよいのではないでしょうか。

広報立ち上げ時こそプレスリリースを徹底活用

どんなことをプレスリリースで配信するのか

プレスリリースは、メディア関係者だけではなく生活者にも企業発の情報を伝える効果的なツールですが、具体的にどのような内容を配信すればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。

PR TIMES MAGAZINEにて、プレスリリースのネタ・事例100選を紹介していますので合わせて参考にしてみてください。

プレスリリースを配信するために欠かせない情報は「『あげてもらう』『拾いに行く』『つくる』の3つが大切」と下村さん。

経営陣や各事業責任者、営業責任者、人事責任者と毎日コミュニケーションを取り、現場から情報をあげてもらうのと同時に、広報PR担当が自らネタを拾いに行く。今、事業の数字はどうなっているのか、お客さまは何に困っているのかなど、アンテナを広げて情報をキャッチアップする体制をつくることもポイントとなるそうです。

プレスリリースを作成するポイントをまとめて解説

プレスリリースのネタが決まったら執筆です。勉強会当日に解説された内容はPR TIMES MAGAZINE内で紹介していますので合わせてご覧ください。

プレスリリース

「5W2H」の情報を整理する

プレスリリースを書く際には、「Who(誰が)」「What(何を)」「Where(どこで)」「Why(どうして)」「How(どのように)」「How much(どのくらい)」「To Whom(誰に)」というファクトの部分をくまなく洗い出し、伝える情報を整理した上でプレスリリースに落とし込みます。

特に「To Whom(誰に)」があるとより伝わりやすくなるでしょう。「私たちはこんなにすごい機能をつくりました」でなく、「あなたにとってこんなに役立つ機能をつくりました」「あなたにとってこんな利益があります」のイメージです。「誰にとっての情報か」という視点があるかどうかで伝わり方が変わるということを意識するとよいでしょう。

メディアフックを見つける

社会のニーズに応えられる要素「メディアフック」を見つけ、プレスリリース内に入れます。自分たちが言いたいことばかりを書くのではなく、「自分たちの関心ごと」と「社会が求めているみんなの関心ごと」が重なる部分を見つけ出すのがポイントです。

ニュースとして取り上げられやすいメディアフック9つはこちらからご覧ください。

メディアフックは1つだけではなく、2つ、3つを掛け算してプレスリリースを作成します。特に「画像/映像」はメディアが記事にする際に使える素材をしっかり届けるためにも非常に重要な要素です。

逆三角形を意識、本文は結論から

プレスリリースを書く際には、もっとも伝えたいことやニュースバリューの肝になる要点は冒頭に持っていき、下へ行くにしたがって説明が詳しくなっていくような「逆三角形」の構成を意識しましょう。

また、時系列順ではなく、ニュースの肝となる結論から伝える「結起承転+展望」の構成を意識して書くとよいでしょう。

「結」はニュースの主旨となるファクト・要点のことで、ここがリード文になるのが一般的です。次に、本文で企業活動の背景やきっかけ(起)、社会背景や課題について触れます(承)。統計データなどはメディアが取り上げやすい要素となります。

取り組む中での転換点などがあれば記載(転)。担当者のコメントなどで盛り込むことができれば共感性も高まります。本文の最後には、継続的なステークホルダーを増やすために今後の展望についても記載し、締めくくります(展)

具体的な5つの構成はこちらをご覧ください。

また、「結起承転+展望」に沿ったプレスリリースのテンプレート20選をこちらで紹介しています。すべて無料でダウンロードできますので合わせてご活用ください。

画像は横長または正方形、複数パターン用意

メディアが使いやすい画像は横長もしくは正方形で、縦横比は1.91:1がおすすめです。縦長の場合には、縦の余白を多くしておくことで横長に自動でトリミングされてしまった際にも影響が出にくいでしょう。メディアによって好みが違うため、とにかくさまざまなパターンを用意しておくことがポイントです。

有形商材の場合は文字が入っていない画像が好まれますが、無形商材の場合にはサービスの詳細などが文字で入った画像でも問題ありません。

プレスリリースを作成したら、いよいよ配信です。以下も参考にしてみてください。

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下村さんへ勉強会参加者からの質問

質疑応答の時間では、参加者の方から寄せられた広報PRの立ち上げやプレスリリース活用についての質問に対し、下村さんとPR TIMESの吉田さんが回答。ここでは、その一部をご紹介します。

──会社の規模が大きく分業制が進んでいるため、社内への共有が難しいです。他部署に向けてどんな働きかけをすればよいでしょうか。

下村さん(以下敬称略)まずは経営陣と一緒に「なぜ広報PRに取り組むのか」という認識を統一することが大切だと思います。その際、優先度が高い部門長の方だけを集めて話すのがポイントです。経営陣やマネージャー陣との認識が取れたうえで、広報PRの重要性や効果、広報PRとしてどのようなネタを必要としているのかなど、その部署全体に対して順番に説明していけるといいと思います。その際、広報PRからだけではなく経営陣からも説明していただくのがいいと思います。

社内に協力をあおいだり、巻き込んだりすることに対する課題はよく伺います。こちらも合わせてご覧ください。

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──人間性やストーリー性を伝える際のプレスリリースの書き方について、ファクトベースで伝えるのと少しウェットな書き方で伝えるのとどちらがよいのでしょうか。

下村:基本的にはファクトベースで書きつつ、「思い」などのウェットな部分も合わせて書く分にはよいのではないでしょうか。ただし、あまり「エモい」感じにしてしまうと合わないこともあるので、会社のカルチャーにもよりますが、そういう部分はオウンドメディアなどで書くのがよいかもしれませんね。

吉田さん(以下敬称略)ストーリー性をしっかり伝えたい場合には、「PR TIMESストーリー」などをご活用いただいて、プレスリリースとストーリーの両方を一緒に出すことで、ファクトの部分とその背景をセットで伝えることも可能です。

──BtoCビジネスでバリューを考える際、メディアと生活者のどちらへの訴求を優先的に考えればよいでしょうか。

下村:メディアの先には生活者がいるので、メディアがバリューを感じるということは生活者も感じることにつながっていると考えています。ただ、生活者向けのメディアと業界誌とでは訴求したい内容はおそらく違うので、BtoBとBtoCに向けた訴求が混在しているプレスリリースの場合は、補足資料を作ってフォローすることもあります。

──PRの指標について、初歩的なポイントで重要なものがあれば教えてください。

下村:「ゴールイメージをきちんと擦り合わせること」です。短期間で企業のイメージを変えたり認知度を上げたり、多数のメディア露出を狙うのではなく、実現可能な半年や1年のスパンで考えることが大切だと思います。

例えば、初期商談などで自社に対するお客さまの認知度やイメージなどを理解しておくと、広報PRの影響でどのように変化するのかがわかりやすくなるのではないでしょうか。

まとめ:広報立ち上げ時の計画と継続がポイント

株式会社しんめの下村さんによる、広報PR立ち上げにおける大切なポイントとプレスリリースの活用法をお伝えしました。

ステークホルダーとの良好な関係づくりに欠かせない広報PR。これから広報PRを立ち上げる際に意識すべきポイントは以下の通りです。

  • 瞬間的なアクションではなく、一貫性と根拠のある情報を継続的に発信していく
  • プレスリリースなどを活用し、インターネット上に情報をストックする
  • 広報PRの目標設計は「誰に何と言って自社を紹介してほしいか」、いわゆる「良い口コミ」をつくっていくことを前提に逆算して決める
  • プレスリリース作成の際は、5W2H×ニュースバリューを表現する

今回の勉強会の内容を参考に、今後の広報立ち上げや情報発信に役立ててみてはいかがでしょうか。

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