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化粧品・コスメの広報PR活動で気をつけたい薬機法とは?知っておきたい10のこと

化粧品・コスメに関する広報PR活動、広告・宣伝活動においては、薬機法(旧:薬事法)をはじめとするいくつかのルールがあります。

薬機法は、広告規制だけ気をつければよいのでは、と思われることもありますが、広報PR活動にも影響があります。例えば、プレスリリースの作成、ブランドサイトやオウンドメディアの運営、自社SNSの発信などに注意が必要です。

本記事では、化粧品・コスメの広報PR活動で気をつけたい薬機法についてのポイントと、知っておきたい10のことをご紹介します。

広報PR活動で気をつけたい薬機法

広報PR担当者にとっても薬機法を理解することは大切なことです。なぜなら、万が一、広報・広告表現において薬機法に違反していることが発覚すると、罰金刑や懲役刑が科される恐れがあるからです。また、対象の製品や広告物の回収や広告の変更に多額の経費や時間が必要となるとともに、自社に対する信用も大きく傷がついてしまいます。

さらに利用者に健康被害が生じた場合は補償金が必要になる場合もあるなど、企業にとって大きな損害を与えてしまうことに。

基本的に、薬機法を守らないといけないかどうかは、それが薬機法の「広告」に該当するかどうかで判断されます。「これは広報なので広告ではない」と思ったからといって、広報PR活動においても無関係とはいえません。プレスリリースやSNSの投稿内容で意図せず薬機法の「広告」に当たると判断される場合がありますので、表現には気をつけましょう

以下に該当する場合は、薬機法の規制対象となり得ますので、特に注意が必要です。

  • 誘引性:顧客を誘引する意図が明確であること
  • 特定性:特定の商品名が明らかにされていること
  • 認知性:一般人が認知できる状態であること

薬機法とは?

薬機法とは、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」の品質と有効性および安全性を確保するため、製造から販売、市販後の安全対策まで一貫した規制を行うこと等を目的に定められている法律です。

旧来は「薬事法」と呼ばれていましたが、2014年11月25日に改正され「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)と名称も改められました。改正後は通称「薬機法」と呼ばれています。

薬機法全体に関しては、下の記事でも紹介していますので、ぜひ確認してみてください。

薬機法における「化粧品」の定義とは?

化粧品・コスメの広報PR活動をするためには、どのような定義があるのかを知っておくとよいでしょう。

薬機法における化粧品は、以下のように定義されています。

薬機法による化粧品の定義(第2条3項)
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

この定義に該当するものとして、

  • 口紅やファンデーションなどのメイクアップ製品
  • 化粧水や美容液などのスキンケア製品
  • シャンプーなどのヘアケア用品
  • 歯磨き製品

などが化粧品に当てはまります。

市場で販売される化粧品商材の中には、一部「医薬部外品(薬用化粧品)」に該当するものもあります。医薬部外品とは、厚生労働省が認めた効果・効能に有効な成分が配合され、予防や衛生を目的に作られており、厚生労働省の承認を得ているもので、人体への作用が緩和なものをいいます。薬機法では、医薬部外品は化粧品とは別の規制を受けるため、別途注意しましょう。

薬機法以外にも確認しておくべきルールがある

化粧品・コスメの広報PR活動にあたっては、薬機法以外にも注意しなくてはいけないルールがあります。

薬機法

【薬機法以外にも確認しておきたいルール】

【参考】
医薬品等の広告規制について(厚生労働省)
「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」

そのほかにも、関連する通知が各所から発出されていることがあるので、見逃しているものがないか社内でよく確認をしておきましょう。

下の記事では、景品表示法に関することを紹介しています。

化粧品・コスメの広報PR活動をするときに知っておきたい10のこと

化粧品・コスメの広報PR活動を行っていくうえで「まずは知っておかないといけないポイントだけを理解したい」という方に向けて、特に押さえておくと役立つことをご紹介します。

薬機法に関わる広告表現はもちろん、そのほかのルールもふまえてまとめています。ぜひ、参考にしてください。

コスメイメージ

1.化粧品で標ぼうできる表現は決められている

化粧品の効果効能として使用できる表現は厚生労働省による通知によって具体的に決められています。化粧品の前提や事実を超えるような過度な表現や決められた範囲を超えるような効能効果を表現できません。広告はもちろん、プレスリリースやブランドサイトなどで発信する際は、このルールを守りましょう。

例えば、シワ対策のスキンケアの場合には、「乾燥による小ジワを目立たなくする」という表現が認められています。これはしばり表現と呼ばれていて、「小ジワの悩みを解消する」「乾燥小ジワをなくす」「小ジワを防いで美肌になる」といった表現を用いることはできません。

医薬部外品に当てはまらない一般化粧品については、厚生労働省による「化粧品の効能の範囲」、厚生労働省から承認を得ている医薬部外品(薬用化粧品)は「医薬部外品の効能の範囲」「薬用化粧品の効能・効果の範囲」「新指定医薬部外品の効能・効果の範囲」に定められています。

<一般化粧品の効果効能に関する表現について>

化粧品の効能の範囲の改正について
化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて

<医薬部外品(薬用化粧品)の効果効能に関する表現について>

医薬部外品の効能・効果の範囲

2.成分や原材料について事実を超える誉めあげはしない

化粧品を構成する成分や原材料の効果・メリットやイメージを訴求することもあるでしょう。価値を伝えたい想いが強まるあまりに、行き過ぎた表現をしてしまうこともあるので注意が必要です。

薬機法第66条の具体的な解釈を示す「医薬品等適正広告基準」では、成分や原材料について事実を超えるような表現を禁止しています。また、実務上よく参考にされている業界団体のガイドラインである「化粧品等の適正広告ガイドライン」においても同じように規定されています。

第4(基準)3(3)医薬品等の成分等及び医療機器の原材料等についての表現の範囲
医薬品等の成分及びその分量又は本質等並びに医療機器の原材料、形状、構造及び原理について、承認書等への記載の有無にかかわらず、虚偽の表現、不正確な表現等を用い効能効果等又は安全性について事実に反する認識を得させるおそれのある広告をしてはならない。

引用:医薬品等適正広告基準

具体的には、「天然成分を使用しているので肌荒れせず安心」「過去最高のデラックス処方」といった過度な表現はできません。後述する4・5・6の項目とあわせて確認すると理解しやすいでしょう。

成分

3.製造方法について事実を超える誉めあげをしない

「医薬品等適正広告基準」や「化粧品等の適正広告ガイドライン」では、成分や原材料と同様に、化粧品の製造方法も事実を超えるような過度な表現も禁じられています

2 製造方法関係
医薬品等の製造方法について実際の製造方法と異なる表現又はその優秀性について事実に反する認識を得させるおそれのある表現をしてはならない。

引用:医薬品等適正広告基準

4.効能効果・安全性を保証する表現は使わない

化粧品の効果効能や安全性に関して、万人に対して確実に保証するような表現を用いることは禁止されています。

具体的には、「これさえあれば」「安全性は確認済み」「赤ちゃんにも安心」などの表現を用い、性別、年齢等の如何を問わず効能効果の確実性や安全性を保証するような表現は認められていません。

医薬品等適正広告基準では、下記のように定められています。

第4(基準)3(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止

医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。

引用:医薬品等適正広告基準

5.効果効能や安全性に関して最大級表現を使わない

化粧品の効果効能や安全性を記載する際に「絶対」「最高の」といった最大級表現やそれに類する表現は使えません

例えば、「最高の効果」「ほかにはない効果」「強力な〇〇」「絶対安全」といった表現は避けましょう。

また、同じ考え方で、No.1表現にも注意が必要です。例えば「効き目No.1」「安全性No.1」などの表示は最大級表現に該当するため禁止されています。ただし「売上No.1」などのように、消費者に効能効果や安全性に対する誤認を与えない表現かつ、客観的調査に基づく正確な結果がある場合には、調査元や調査期間を含めた出典を明らかにしたうえで記載できます。

(6)効能効果等又は安全性についての最大級の表現又はこれに類する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、最大級の表現又はこれに類する表現をしてはならない。

引用:医薬品等適正広告基準

【最大級表現に関して】

6.効果効能や安全性を示す体験談は掲載しない

愛用者の声として感謝のコメントを列挙したり、「私も使っています」といった体験談的な内容で効果効能や安全性を訴求したりすることは、生活者に誤解を与えるおそれがあるため原則として認められていません

ただし、効能効果又は安全性以外の使用方法・使用感・香りのイメージ等に関しては、事実に基づく使用者の感想の範囲であれば認められます。その場合も過度な表現や保証的な表現とならないように注意しましょう。

7.使用前後の図画・写真で効能効果等や安全性を保証する表現をしない

化粧品の使用前後の比較を画像やイメージ図で表現する場合、化粧品で認められた範囲外の効能効果や、効果が出るまでの時間や効果持続時間に関して、保証する表現や、安全性を保証するような表現は認められていません

ただし、口紅の色の説明やファンデーション、アイシャドウなどによるメーキャップの効果を、素顔と比較して「化粧例」「仕上がり感」として示すことは可能とされています。

事実の範囲を超えて効果又は安全性の保証表現とならないように注意しましょう。

【参考】
メーキャップ化粧品の広告表現について(日本化粧品工業連合会)
医薬品等適正広告基準
医薬品等広告に係る適切な監視指導について

8.他社製品の誹謗や比較は行わない

他社を誹謗したり、他社の製品と比較することによって、自社の製品が優れていることを際立たせて表現することは禁止されています。

第4(基準)9 他社の製品の誹謗広告の制限

医薬品等の品質、効能効果、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告を行ってはならない。

引用:医薬品等適正広告基準

誹謗的な表現としては、以下の2つのようなものがあります。

  1. 他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現すること
    例:「他社の口紅は流行おくれのものばかりです」
    
  2. 他社の製品の内容について事実を表現して自社が優位であるかのように標ぼうすること
    例:「どこでもまだ××式製造方法です」

比較表現は、効能効果等又は安全性を保証する表現に抵触するおそれがあります。製品同士の比較を行う場合は、自社製品の範囲にとどめ、他社製品との比較は行ってはなりません。自社製品間での比較を行う場合は、対象製品の名称を明示するなど、十分に説明するようにしましょう。

9.医薬・美容師・理容師等の保証表現はしない

化粧品に関して、医薬関係者や美容師・理容師、病院・クリニック、学校・学会等にあたる人の推せん・保証表現をすることは、生活者の認識に与える影響が大きいと判断されるため原則禁じられています

例えば、商品に「〇〇病院の△△先生が推せん!」などといった、医師が保証していると誤解されるおそれがある内容は禁止とされています。

なお、美容ライターや美容家(専門家、研究家など)が、推せんする行為は直ちに違反とはなりません。ただし、効果効能に関して、生活者の認識に相当の影響を与えると考えられる場合には、この項に抵触するおそれがあるので注意が必要です。

第4(基準)10 医薬関係者等の推せん

医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。

引用:医薬品等適正広告基準

10.恐怖訴求はしない

情報を受け取った生活者が、不快・迷惑・不安になるような恐怖訴求を用いることは適正広告基準で禁止されています。

例えば、プレスリリースや自社サイト、広告上で「あなたはすでに〇〇病です」といった表現をしたり、動画上でや音声で製品名を不快なレベルで(目安:5回程度)連呼したり、不快感の強い音声を流すことなどが当てはまります。

せっかくの自社製品がネガティブに伝わることがないよう、本来の価値や魅力を前向きに伝えられるように工夫しましょう。

第4(基準)12 不快、迷惑、不安又は恐怖を与えるおそれのある広告の制限

広告に接した者に、不快、迷惑、不安又は恐怖を与えるおそれのある表現や方法を用いた広告を行ってはならない。特に、電子メールによる広告を行う際は、次の方法によらなければならない。

(1)医薬品販売業者の電子メールアドレス等の連絡先を表示すること。

(2)消費者の請求又は承諾を得ずに一方的に電子メールにより広告を送る場合、メールの件名欄に広告である旨を表示すること。

(3)消費者が、今後電子メールによる広告の受け取りを希望しない場合、その旨の意思を表示するための方法を表示するとともに、意思表示を示した者に対しては、電子メールによる広告の提供を行ってはならないこと。

引用:医薬品等適正広告基準
プレスリリース作成イメージ

薬機法などのルールを把握し、信頼される広報PR活動を

化粧品・コスメの広報PR活動で気をつけたい薬機法について解説してきました。

薬機法は、化粧品・コスメだけでなく、家庭用の美容機器なども含め美容ジャンルに関しては幅広く必要とされる知識です。広報PR活動における、プレスリリース、自社サイトやSNSなどで発信する際は、広告性が妥当と判断されることがないように薬機法などのルールを守るようにしましょう。

ルールを守り、正しい情報を発信することは、生活者や社会との信頼関係を築くためにも大切なことです。自社の商品・サービスを安心して利用してもらうためにも、薬機法をはじめ、取り巻くルールに則った情報発信をするように気をつけましょう。

また、これらのルールは必要に応じて更新・改正されることもあります。常に最新の情報を確認し、認識をアップデートするようにしてくださいね。

(執筆:根本 智帆)
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

化粧品・コスメの広報PR活動で気をつけたい薬機法に関するQ&A

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この記事の監修者

新城 安太

新城 安太

弁護士法人至誠法律事務所/弁護士 クライアントと共にKPIを追う弁護士として、通販(D2C)事業、広告事業、美容医療事業に関わる企業やクリニックに対するリーガルサービスを提供。薬機法、景表法等の広告規制に関しては、セミナー講師、代替案の提案を含む広告チェック、社内の広告コンプライアンス体制構築支援、広告審査人材の教育、行政対応を主に行う。

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