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フェムテックとは?市場・企業事例などの基礎知識から広報PRのポイントまで解説

フェムテック元年と呼ばれた2020年からはや2年がたち、フェムテック市場は日々進化を遂げています。市場が広く知られるようになったことから、広報PRが取り組むべき施策や課題が以前より明確になる一方、まだ正解がわからない内容も多く、困っている広報PR担当者が多いのではないでしょうか。

そこで今回は、フェムテックに関する基礎知識を確認したのち、フェムテック領域の広報PRのポイントや、フェムテック業界の広報PR事例を詳しくご紹介します。

フェムテックとは?

フェムテックは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。ドイツの月経管理アプリ「Clue」を開発した、デンマーク人が市場をつくるために言葉をつくったのが始まりとされています。

一般的には生理や妊娠、更年期やセクシャルヘルスなどの健康問題を解決するために開発された、テクノロジーを用いたサービスやプロダクトを指します。

フェムテックイメージ

フェムテックの認知度や注目されている背景

日本国内におけるフェムテックの認知率は、2022年で5.7%にとどまっています。しかし2021年の調査時には1.9%だったことから、徐々にではあるものの、認知度が高まっていることがわかります。

参考:SOMPOひまわり生命 健康応援リサーチ「日本のFemtech(フェムテック)市場の可能性に関する調査」第3回

認知度向上とともに、さまざまな動きも広がっています。

一般社団法人日本フェムテック協会は、毎年2月19日を「フェムテックを学ぶ日」として記念日登録しました。女性の健康に意識を向け、知識をアップデートするきっかけの日として提唱しています。また、ファッション誌でフェムテックに関する特集が組まれるなど、フェムテックを取り巻く環境は大きく変化しています。

近年ではベンチャー企業だけでなく、大手企業もフェムテック市場へ続々参入しており、注目度向上に寄与しています

フェムテック市場の変化

日本国内だけではなく、世界的な注目度が引き続き高いフェムテック市場は、日々目まぐるしく変化しています。テクノロジーの発達にとどまらず、大手企業の参入や女性起業家の増加など、フェムテック市場を取り巻くニュースは新たな希望にあふれています。そこで今回は、世界および日本におけるフェムテック市場の変化を見ていきます。

世界におけるフェムテック市場

女性の健康やウェルネスに特化したVC「Coyote Ventures」と、フェムテック領域の情報配信やスタートアップ支援を行うNPO団体「Femtech Focus」の予測によると、世界におけるフェムテック市場は、2027年までに1兆1,860億ドル、日本円にして138兆円もの市場規模に成長すると予測されています。

これまでとは異なる製品やサービスが誕生しており、セクシャルウェルネス製品のD2C企業が誕生したり、子宮内膜症を非侵襲的に診断する方法が開発されるなどの進化を遂げています。また、世界的に見れば富裕層向けの製品やサービスは一部飽和状態に近づいているものの、低所得層向けの製品やサービスのニーズは今後も高まっていくことが予想されています。

日本におけるフェムテック市場・企業事例

株式会社矢野経済研究所が2021年10月に発表した、「フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査」では、2020年のフェムケア&フェムテック市場規模は約597億円に上り、日本国内における市場規模のポテンシャルが証明されました。

また、2021年の「2021ユーキャン新語・流行語大賞」に「フェムテック」がノミネートされたほか、日本国内におけるフェムテックやフェムケア市場の枠組みを示したカオスマップが公開され、フェムテック市場に参入するプレイヤーが増えていることがわかります。

経済産業省がフェムテック活用における実証実験に補助金を拠出しているほか、大手企業も積極的にフェムテック市場へ参入していることから、市場全体が大きな盛り上がりを見せているといえるでしょう。

フェムテック領域の広報PRをするときの7つのポイント

フェムテック市場が拡大を見せる中、広報PRとしては積極的に製品やサービスの認知を獲得していきたいところです。しかし、いざ広報PRに取り組もうとすると、ほかの領域と比較して慎重にならざるを得ません。

では、どのような点に注意するべきなのでしょうか。7つのポイントをご紹介します。

ポイント

ポイント1.タブーな話題ではないことを発信する

フェムテックは女性の身体と密接に関わっているため、タブー視されがちです。これまで女性同士の会話の中でも取り上げられることは少なく、つらさや不快感を声に出すことが控えられてきました。広報PRの立場としてはまず、フェムテックは女性にとってタブーな話題ではないことを正しく発信する必要があります

心身ともにベストコンディションで日々の生活を送ることは、決して悪いことではありません。製品やサービス以前に、女性特有の悩みはテクノロジーで解決できる可能性があることや、緩和できる可能性があることを発信することで、企業としての信頼度を高めることにもつながります。

ポイント2.ユーザー以外の「フェムテック」の関心も醸成する

先にご紹介したように、フェムテックの社会的な認知度はまだまだ高いとはいえません。そのため、ユーザーとなる女性以外にもフェムテックを啓蒙していく活動が重要です。

経済産業省によると、「生理に伴う体調不良による労働損失や医薬品・通院にかかる費用」などの負担は年間約7,000億円に上るという試算もあり、金額的な損失はもちろん、時間的な損失にもつながりかねません。この損失はフェムテックのユーザー本人だけではなく、パートナーや家族、企業の上司やチームメンバーなどに影響する可能性があることから、「パートナー向け」「企業向け」など、さまざまなアプローチを行えるようにするのがおすすめです。

ポイント3.自社製品の安全性を可視化する

フェムテック製品の信頼性や安全性の担保は、現在も各企業に委ねられています。したがって安全性に疑いを持つユーザーは少なくありません。そのため、自社製品の安全性を可視化する必要があります。製品の安全性を主張するうえでのエビデンスの提示をはじめ、専門知識を持つ有資格者のコメントなど、客観的な安全性を可視化できるように整えていく必要があります。

一見すると広報PRの領域を超えた仕事のようにも感じますが、安全性を示す絶対的な要素が定まっていないからこそ、広報PRによるリスクヘッジが重要となります。

ポイント4.価格が適正であることについて根拠を発信する

フェムテックは発展途上の領域のため、商品価格が高くなりやすいという特徴があります。必要に迫られた価格設定だとしても、新たな領域であることも相まってユーザーの不信感が募りやすくなってしまいます。なぜ、そのような価格設定になっているのか、商品開発のストーリーなどと合わせて発信していくことが効果的です。

具体的な素材名を列記しても、ピンとくるユーザーは多くはないでしょう。製品やサービスのユーザーにとって、納得感を醸成する情報は何かを見極め、広報PRがアレンジしていくのがおすすめです。

ポイント5.薬機法など、準拠するべき法律を正しく理解する

フェムテック製品は、医療と健康管理の境界線にあるとされています。したがって、医療機器として認可を受ける場合とそうでない場合があります。

安全性に配慮するのであれば、医療機器の認可を取るべきだと考えるかもしれません。しかし医療機器の認可を得るためには費用だけではなく、承認までに長い時間を要します。日々進化を遂げるフェムテック市場で勝機を逃さぬよう、医療機器の認可を受けない製品は少なくありません。

また、医療機器の認可を得ると薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に準拠しなければならないという懸念もあります。薬機法では、広報PR時の文言が厳しく制限されているため、つい利用したくなるような表現方法が規制されています。薬機法違反は製品にとって大きなダメージとなる可能性があるため、自社内でチェックを完結させるのではなく、有識者の知見を借りるといった工夫も必要です。

ポイント6.広告ガイドラインに注意する

フェムテック商品に関する広告配信を行う際、「フェムテック商品だから」という理由で広告配信が制限される場合があります。広告配信の領域において、フェムテック商品は「セクシャル」「センシティブ」といった分類をされることが少なくありません。

広告デザインや文言の変更に意味はなく、製品そのものによって広告配信が制限されてしまう可能性があります。広告配信を検討する際は、事前に広告ガイドラインを細かく確認しておくと安心です。

ポイント7.社会的なイベントを有効活用する

フェムテック製品やサービス単体では、情報が届くユーザーに限界があります。そこで、より多くのユーザーへリーチできるよう、社会的なイベントを有効活用するのがおすすめです。

女性への感謝を伝える「国際女性デー」や、男性が女性にプレゼントを贈る機会となるホワイトデーなど、直接的な関連が見えなくても、フェムテック領域と連携させていくのが広報PR担当者の腕の見せどころです。社会的な注目が集まるタイミングを狙って、製品やサービスだけではなく、フェムテック領域全体に注目を集めることで、今後の広報PR活動が展開しやすくなるでしょう。

フェムテック業界の広報PR事例5選

では、フェムテック業界ではどのような広報PRが実践されているのでしょうか。製品やサービスの広報PRにとどまらず、フェムテック業界に対しても影響を与えている事例をご紹介します。

事例1.合同会社DMM.com

DMM.comでは、国際女性デー×ダイバーシティ社会の実現を掲げながら、「フェムテック推進EXPOアンバサダー」として選出したアンバサダーとともに、メッセージを発信しています。

国際女性デーの象徴であるミモザの花を連想させる黄色い広告を東京駅に掲出し、その様子をプレスリリースやアンバサダーを含めたSNSで拡散することで、フェムテックユーザー以外にもうまく情報を届けています。

ユーザーとなる女性だけでなく、社会全体へフェムテックを絡めたメッセージを発信することで、フェムテック自体の認知拡大を行うことができている例です。

事例2.デッカーズジャパン合同会社(UGG®)

フェムテック業界は女性起業家が多く、数々のメディアに登場しています。登場した当初は物珍しさがあったものの、これまでに多くの女性起業家が企業、もしくは製品やサービスとともにブランディングされてきました。

女性起業家をただフェムテックという切り口で登場させるのではなく、国際女性デー×ファッションブランドという切り口でブランディングすることで、これまでフェムテックの情報が届かなかった層へリーチすることができるようになります。

ファッションブランドサイト内で、女性起業家のインタビューが掲載されることで、ファッションブランドの製品を購入しに来たユーザーにアプローチすることもできるという事例です。

事例3.株式会社 BLAST(Nagi)

フェムテック製品やサービスの対象は女性ですが、贈り主が女性である必要はありません。そこでフェムテックブランド・Nagiでは、ホワイトデーのギフトとしてフェムテック製品をパッケージ化し、男性から女性へのギフトとなるように仕立てました。

これらの情報をプレスリリースとして配信することで、ギフトとしての物珍しさからホワイトデー市場内で注目され、男性の目に留まる可能性が高くなります。結果的に対象外の人々にうまく情報をリーチすることができ、フェムテックを社会的に周知することにもつなげている例です。

事例4.豊島株式会社

イベントへの協賛をプレスリリースの配信内容としながら、その中にフェムテックに絡めた自社製品やブース紹介をうまく織り込んでいる例です。

タイトル内でフェムテック以外の内容についても触れられているため、フェムテック製品やサービスのユーザー以外にもリーチできる可能性が高い仕立てとなっています。また、プレスリリース内でイベントへの誘致も行っていることから、1枚のプレスリリースに有益な情報を積極的に織り込んでいる事例ともいえます。

事例5.株式会社産業経済新聞社

近年増えている、フェムテック領域に関するセミナーや、オンラインイベントの告知を行うプレスリリースです。

セミナーやオンラインイベントの案内をプレスリリースで行うことが有効なのは、すでに広く知られています。フェムテック領域は新興市場のため、セミナー情報も企業をブランディングするといった観点で、特にプレスリリースを配信するべき内容だといえます。

また、フェムテックを扱う企業としてだけではなく、有識者として登壇する人たちをブランディングすることも可能です。フェムテック×有識者の形でオンライン上に情報が残ることから、今後のフェムテック領域の活動を期待していくこともできるでしょう。

そういった観点で、情報を丁寧に織り交ぜたプレスリリース例といえます。

新たな領域だからこそ、安心・安全に配慮した広報PRを

以前と比較し、社会的な認知度が高まってきているフェムテック。しかし、現時点ではまだ知らない人が多いのもまた事実です。広報PR担当者は、新しい領域であることを忘れてはなりません。

興味・関心があるユーザーは増えていても、最初の一歩を踏み出すことができない人も多いでしょう。製品やサービスに関するストーリーや企業の紹介など、さまざまな情報発信を行うことはもちろん大切ですが、何よりも安心や安全に配慮することが重要です。

新たな領域だからこそ、広報PRにも大きなチャンスがあります。チャンスをつかむことができるのは、正しい知識を持って行動に臨むときです。ユーザーにとって安心かつ安全であることが正しく伝わるような、広報PRを実現していきましょう。

フェムテックに関するQ&A

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この記事のライター

中川真利奈

中川真利奈

現役広報ライター。通信系IT企業にて広報や採用を中心とした人事、総務などを担当。<br> 2019年よりジャンルを問わず執筆する、副業ライターとして活動中。<br> ライティングを通じて新たなジャンルを開拓し、知識を蓄えていくのが好きです。<br> 悩み多きひとり広報時代を救ってもらった記事のような、お役に立てる記事をお届けします。

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