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メディア視点から見る食品・飲料2023総決算&2024年トレンド予測

PR TIMESでは、10月31日に食品メーカーの広報PR担当者を対象にした「交流・情報交換会」を開催。ROOMIE KITCHEN編集長の山崎香さんと、日経クロストレンド副編集長の森岡大地さんにご登壇いただき、メディア視点から見た今年度のトレンドの振り返りと、2024年のトレンド予測について伺いました。本レポートでは、その一部をお届けします。

ROOMIE KITCHEN 編集長

山崎香(Yamazaki Kaori)

放送局、出版社などで書籍、女性ヘルス系雑誌、ラグジュアリー住宅誌等を担当。2018年メディアジーン入社、「Cafeglobe」「MASHING UP」副編集長、「MYLOHAS」編集長を経て、2022年6月より「ROOMIE KITCHEN」編集長「ROOMIE」副編集長に就任。

日経クロストレンド 副編集長

森岡 大地(Morioka Taichi)

2006年東北大学大学院理学研究科天文学専攻修了。同年、日経ホーム出版(2008年に日経BPと合併)に入社。日経トレンディ編集部にて、記者・編集業務に携わる。2013年に日経ビジネス記者。2014年より再び日経トレンディに。19年より日経クロストレンドを兼務し、20年より専任。22年より現職。スイーツ好きが高じ、トレンディではスイーツ・手土産を担当。クロストレンドでは、大手企業からベンチャー・スタートアップ、個店、大手企業まで幅広く取材を行う。私生活では、2児の父として育児と仕事の両立に奮闘中。

2023年注目記事から見るトレンドの振り返り

第一部では、『ROOMIE KITCHEN』と『日経クロストレンド』で2023年に公開された記事の中から、特に注目度の高かったものをピックアップ。『ROOMIE KITCHEN』編集長山崎さんと『日経クロストレンド』の副編集長森岡さんに注目記事から見るトレンドを振り返っていただきました。

生活者のシーンに切り込む『ROOMIE KITCHEN』

『ROOMIE KITCHEN』反響が大きかった記事3選

山崎(以下敬称略):『ROOMIE KITCHEN』は、「美味しく、おうちごはん」をテーマにした、自宅で食べるごはんに特化したメディアです。料理が好き、美味しいものを食べるのが好きという読者をターゲットに、いかに美味しいものを自宅で食べるかを一貫して伝えています。その中でも、2023年にもっとも読まれた記事は以下の3つです。

1.今年は「白湯」を始めたいという方へ。手間なしでカンタンにつくって持ち歩く方法はコレ!!|マイ定番スタイル

一つ目は「白湯」の記事でした。この記事は、白湯のつくり方を紹介していますが、実はマイボトルの紹介記事なんです。マイボトルを紹介するために、どこを入り口にすれば読んでもらえるのかを考えて、白湯にひっかけて記事化しました。

白湯は、ヨガなどウェルネス系のインストラクターやモデルの方がSNSなどで紹介して話題になりはじめてから、生活者に広まるまでに10年くらいかかったんじゃないでしょうか。最近ではコンビニでも白湯を扱うようになって驚きましたが、売っているものと家でつくれるものがバイラルで人気がでていくことを実感しました。

2.おにぎりをラップ、ホイル、クッキングシートの3種で包装。4時間後にいちばん食感がよかったのはね……

二つ目。おにぎりは家庭でそれぞれつくり方が違いますが、どれが一番美味しいのか疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。それを検証したのがこの記事で、1本目が100万PVほど、再編集記事などを含めると200万PVほど読まれた大ヒット記事でした。

3.フライパンと塩水だけでOK! プロが美味しさを追求した「スイート焼き芋」のつくり方

三つ目。これは昨年の記事を再編集して掲載したものですが、10月の公開からすでに約29万PV読まれています。焼きいもに関する記事はこれ以外にも4、5本出しましたが、いずれも大ヒットでしたね。

どこでも売っているものだからこそ、家でもつくりたいよねと取り上げたのがはじまりでしたが、どうやったら美味しくなるのかという切り口で取材したことがきっかけで記事化されました。

商品軸ではなく生活のシーンが見えることを大切に

──注目度の高い記事、どれも新商品の紹介など商品軸の記事ではないのがおもしろいですね。

山崎:『ROOMIE KITCHEN』は、「料理をするときにどういうことがストレスなのか」「それを私たちが紹介するものでどう解決していけるのか」にこだわって記事を発信しているので、取り上げるのは新商品でなくても構いません。

例えば、おにぎりの記事は「包むもの」、焼き芋なら「焼く道具」というように、入り口をいろいろなところからはじめて、最終的に商品紹介に落とすという方法で記事をつくることもあります。ヒットしたものがあると、それをいろいろな角度から紹介していきながら、大々的に伸ばしていくイメージです。

──新商品発表と実際の発売日までの期間、発売した後、新商品が出ないタイミングなどは新しいニュースがなく、皆さん悩むところだと思いますが、季節に合わせた使い方の提案としてヒントになりそうですね。

森岡さん(以下、敬称略):「シーン」が見えるのがとてもいいなと思います。「マイボトルが可愛いから買ってください」という切り口だとお店にいくらでも並んでいるし、そういう記事は他でもたくさんありますが、白湯を飲んでみたいと思っている人に対して、副次的にボトルの情報が来るというのは素晴らしい。

おにぎりの記事も、4時間後というキーワードを入れることで、お弁当に持っていくシーンがイメージしやすくて、とてもうまいですよね。最近は、商品づくりやマーケティングにおいても「どういうシーンのときに響くのか」がより大事になってきていますが、それがうまく体現されていると思います。

交流・情報交換会01

「消齢化」を深掘りする『日経クロストレンド』

『日経クロストレンド』で大きな反響があった記事

森岡:『日経クロストレンド』は、「マーケティングがわかる、消費が見える」をコンセプトにしていて、マーケターのためのデジタル戦略や消費分析、未来予測などの記事を発信しています。有料のサブスクがメインの媒体なので、今回ピックアップしたものも有料会員になってくださった読者の方に特に多く読まれた記事です。

1.データで見る「好きな料理」30年史|ラーメンが「食った」料理は?

一つ目は『日経クロストレンド』の人気連載で、博報堂の生活総合研究所が集めた食に関するデータをもとにした記事です。焼肉の人気順位が何位から何位に上がってきた、何々は下がってきたという変遷がひと目でわかる記事になっていると思います。

具体的には、寿司はずっと不動の1位なんですが、焼肉がランクが上がり、2022年は唐揚げ、餃子、ステーキとどんどん肉料理が増えてきている傾向が見えて、おもしろい結果になりました。読者の方にとっては自分の好きなものが何位なのか答え合わせができますし、マーケティングに携わる方にとっては世の中のトレンドを見る上でも気になる内容ではないでしょうか。

230年データで突き止めた新ワード「消齢化」。消えゆく年代の壁

二つ目は、30年間のデータを分析したことで、年代や世代における価値観の差がどんどん狭まる「消齢化」の傾向が見えたという記事の第一弾です。

例えば、焼肉をはじめとする肉料理はみんなが好きで、世代間の差がなくなってきています。健康寿命が伸びて元気な高齢者がお肉を食べられるようになったことや、「高齢者はさっぱりしたものが好き」というステレオタイプな価値観がなくなり、世の中が「高齢者だって肉がすきだよね」という空気感になったことなどが理由だと考えられます。「消齢化」が食のなかでも見えた記事で、反響が大きかったため、その後編集部で特集を組むなどして継続的に追いかけています。

3「ペルソナ巧者」がはまった落とし穴。Jagabee原点回帰でV字回復

三つめは「消齢化」というキーワードから特集化した記事です。「進む『消齢化』世代マーケの限界」という特集になるんですが、その中の企業事例として、カルビーさんのポテトスナック「Jagabee(じゃがビー)」を取り上げています。

Jagabeeは、もともとはペルソナをしっかり想定して、そのターゲットに訴求するのがうまいといわれていました。ところが、最近はそれが効きにくくなっているのではないかということから、少しペルソナに対する考え方を緩めたのです。やはり影響としては「消齢化」が背後にあるのではないかと考えて分析したのがこの記事で、とても大きな反響がありました。

年齢の境界が薄れつつある食品・飲料業界

──食品や飲料では、世代論やペルソナが通用しにくくなっているということでしょうか。

森岡:世代論がまったく通じなくなってきたわけではないと思います。しかし、今までなら世代で区切っても問題なかったことが、それでは響きにくくなってきているのは事実でしょう。世代別やペルソナで人を見た場合でも、本当にその世代だけに閉じた話なのかを見極めることが大切です。

例えば、20代の間で何かが流行していたとして、それが本当に20代の中だけの流行なのかというと、それ以外の世代にも意外と同じようなマインドの人がいることも。そこはきちんと探しに行かなければならないと思いますね。

山崎:『ROOMIE KITCHEN』は20〜40代と読者層が幅広いのですが、そこに当てはまるかどうかは気にしつつも、実際にはもう少し幅広くとらえています。年齢に対する枠よりも、自分たちが「どういう暮らしをしている人に届けたいか」にフォーカスすることが大切ではないでしょうか。

交流・情報交換会02

編集者の情報収集とトレンドの見つけ方

日々移り変わる流行の中で、メディアの編集者がどのようにしてトレンドをキャッチしているのかは、広報PR担当者にとって気になる部分ではないでしょうか。山崎さんと森岡さんに情報収集の方法やトレンドの見つけ方、メディア目線で商品のどのような点に注目するのかを伺いました。

情報収集はSNSと市場調査の両軸から

──おふたりは普段、どのようにして情報収集していますか。

山崎:私自身はスーパーやコンビニにはほとんど毎日足を運んでいますし、SNSももちろん頻繁に徘徊していますね。また、『ROOMIE』と『ROOMIE KITCHEN』は編集会議が合同で行われるのですが、毎回集まる15人ほどのメンバーはありがたいことに年代も性別もバラバラで、いろいろなテーマが出てくるんです。毎週消費者のグループインタビューを実施しているような状態に近いので、そこから発想することも多いですね。

森岡:私もX(旧 Twitter)は頻繁にチェックしていて、そこからかなりの情報を集めています。また、実店舗も訪れますが、そこで意識しているのが「定点観測」。特定のヒットが生まれそうな、トレンドの発信源になりそうなお店を、特定の時間や曜日などできるだけ変化がとらえられる形を意識して訪れています。

そのほかの情報収集としては、最近は「人づて」も多いですね。SNSは情報を集めるには便利なツールですが、そこで見つけられるのは公然と出ている情報になります。その前段階というか、もう少し小さな「ヒットの芽」を探すときには、やはり人に聞くのがいいのかなと。例えば、取材をした人に最近気になっている人や、自分の周りで流行していること、マーケティング的におもしろいことをしている人がいないかを聞いたりしています。実際に、そこから取材につながっていくことも多いんですよ。

惹かれるのは裏付けや独自データがある商品

──企業から送られてくるプレスリリースや商品発表会などで注目するのは、どのような点でしょうか。

森岡:その企業がなぜそれをやるのかという、意味の裏付けは必要だと思っています。例えば、「うちは技術力があるからこの技術を使っています」というのも文脈ですし、「自分たちはこういう歴史があるからこそこの商品に行き着きました」というのも、その企業がやる理由になるでしょう。商品開発や企画段階から何を考えていたのか、強みはどこにあるのかという部分がしっかり見えるものは、やはり取り上げやすいですよね。類似する新商品がいくつもあった場合は特に、そういう文脈の中から出てきたものを選びたいと思います。

山崎:商品がどういう工程で、どのような考えでつくられたのかがわかると、まずは「読者におすすめしても大丈夫かどうか考える」という、第一ステップの判断材料となります。そういった意味でも、裏付けや信頼感はとても大切です。そういう意味でも、実際に数字やデータなどがあると助かりますね。

森岡:その企業しか持っていないデータには興味が湧きますよね。長年何らかの業界でずっとやってこられた企業さんなら、その業界に関する数字など持っていることも多いはず。自社のデータの中から何か読み取れたものを情報としていただけると、それはその企業さんでしかつくり出せないものなので、メディア側も興味を持ちやすいと思います。

実店舗で売れている商品をチェック

──実店舗での市場調査ではどのような点を見ていますか。

森岡:売り場の商品配置の面積です。例えば、冷凍食品コーナーの中でも果物や冷凍野菜のコーナーが増えているのか、総菜のコーナーが増えているのかといった具合。レトルト品ならどういったものが売れているのか、果物コーナーの中ではどういう果物が人気なのかなど、棚割りを定点観測することでトレンドが見えてきます。また、どういう商品にお客さんが集まっているのかも気にして見ています。流行しているものが何なのかは、定点観測していると人のたまっている場所が変化することで気付きやすくなると思っています。

山崎:私の場合は、まず季節を感じるということ。そして、商品パッケージに書かれた「何万個も売れています」という情報や、「今売れています」という店頭のポップなどを見ながらヒット商品を探すこともあります。地域によって並んでいる商品も異なるので、地域性も注目しているポイントのひとつです。

──新商品発売の発表と実際に店頭に並ぶまでに時差がありますが、店頭に並ぶ時期に関する情報もあると取り上げられやすいものでしょうか。

山崎:うちの媒体は、新商品にこだわっているわけではなく、美味しいものであることが一番なので、人気が出そうな商品であれば定番のものや昔からあるものでもいいんです。新商品が店頭に並んだという情報よりも、「今これが売れています」という情報があったらぜひ教えていただきたいですね。

注目しているキーワードから見る2024年のトレンド予測

第二部の最後は、山崎さんと森岡さんが個人的に注目しているキーワードと、メディア視点の2024年トレンドを予測。ここからはその様子をレポートします。

自分好みにカスタマイズする「ちょいアナログ」

山崎:「ちょいアナログ」に注目しています。時短料理が極まって、電子レンジ調理やほったらかし家電みたいなものも増えましたが、個人的にはほんの少しだけ手間をかけたいという風潮も出てきているんじゃないかと思っているんです。

例えば、先日、蒸しものをつくるときにフライパンに置いて使う「簡易版の蒸しカゴ」を取り上げたんですが、その記事がとても読まれました。今までなら、電子レンジで手軽につくれますよという部分で終わっていたのが、今はひと手間必要な蒸しカゴの記事が読まれる。『ROOMIE』というメディアでも、スマホのカメラがとても高性能になっているのに、普通のコンパクトデジタルカメラの記事が読まれたり、使い捨てカメラの記事が読まれています。

そのことからも、少しだけ自分好みにカスタマイズしたい、大変だけど、ちょっとだけ手をかけたいという意識があるのかなと思ったんです。それが食であれば、用意してから食べるまでの間に「楽しい」「わくわくする」という感情が挟まるのが「ちょいアナログ」なのかなと。料理を食べるだけじゃなくて、楽しい時間を求めているのだと思います。

時間をリッチに使う「タイムパフォーマンスの究極化」

森岡:今年は「タイパ(タイムパフォーマンス)の年」ともいわれているので、来年はさらにその先の「タイムパフォーマンスの究極化」が気になっているキーワードです。タイパは「時短」のようなとらえ方をされることが増えていて、プレスリリースでも時短要素の強い記事がタイパとして届くことも結構あります。しかし、個人的にはタイパは決して時短ではないと思っているんです。

時間が長くかかっても、長い時間に見合った以上の価値が見られればタイパではないかと。そうなると大事になってくるのが、やはり「シーン」だと思います。どういうシーンで満足感を得られるのかというと、「誰と何をするか」が大事になってくると個人的には感じているんです。

一緒にいて心地よい人となら、どんなに長い時間であっても終わったあとにその時間が無駄だったとは思わないですよね。その時点でタイパは成立しているのではないでしょうか。

例えば、あるときまではアルコール度数が高くて短時間で酔えるものがコスパがよくて時短といわれていましたが、最近は低アルコールのものもたくさん出ていて、お酒が弱い方はもちろん、じわじわ時間をかけてじっくり話したいときの選択肢としても成り立っています。

時短ばかりをやっていると味気なくなってくるので、リッチに時間を使いたいという気持ちもあるはずです。タイパの究極形「誰と過ごすか」というところはこれからも追いかけていきたいと思っています。

食品・飲料メーカーがトレンドを活用するには

メディア視点から見た今年度のトレンドの振り返りと、2024年のトレンド予測について、山崎さんと森岡さんのお話を伺いました。

食品・飲料メーカーの広報PR活動にトレンドを活用するコツは以下の通りです。

  • シーンが見えることを意識する
  • 世代論の境界を広げ、「誰に届けたいか」にフォーカスする
  • なぜ自社で取り組むのかという理由と自社ならではのデータを提示する
  • 2024年注目キーワードは「ちょいアナログ」と「タイムパフォーマンスの究極化」

今回のトークセッションの内容を参考に、今後の情報発信に役立ててみてはいかがでしょうか。

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