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ソーシャルリスニングとは?実施&分析方法と成功させる3つのポイントを解説

幅広い年齢層の人が親しみ、利用者が拡大の一途をたどるSNS。そのSNSを活用したマーケティング・広聴手法「ソーシャルリスニング」が今注目を集めています。そこで本記事では、ソーシャルリスニングとは何か、また、分析方法や成功のポイントをご紹介します。

ソーシャルリスニングとは

ソーシャルリスニングとは、TwitterやInstagram、Facebookなどの代表的なソーシャルメディア(SNS)に加え、ブログや掲示板、レビューサイトなどで発信された情報を収集・分析し、そこで見いだされたさまざまな意見などをビジネスに反映させるというマーケティング・広聴手法です。

SNSにて発信されているあらゆることが対象となるため、商品やサービス、広告宣伝施策や顧客対応など、企業活動における幅広い領域で活用。

ソーシャルリスニングが注目されている背景

これまでも企業は「生活者の声を聴く」施策を行ってきました。では、なぜソーシャルリスニングに大きな注目が集まっているのでしょうか。

生活者の声を聴く代表的な施策として「アンケート調査」があります。アンケート調査では対象となる属性の人を分析に必要な数(サンプル)だけ集め、企業または調査会社から出す質問項目に答えてもらうというものです。あらかじめ調査会社が協力してもよいという意思を持っている人を候補として擁していたり、謝礼を用意するなどのケースもあり、回答内容には高い信用性があります。

しかしその半面、「企業から依頼されているアンケートである」という意識が働き、正直な意見を書きづらく本来の評価よりも甘くつけてしまった、というケースも少なくありません。また、自由記入欄があるものもありますが、原則として質問に対しての回答となるため、得られる情報が限定的でした。

一方で、ソーシャルリスニングはSNSの中における生活者の自由な発言を、キーワードに基づき分析するため、フィルターや制限のないリアルな意見を聴くことが可能です。また、アンケートでは調査対象者数にある程度の限りを設ける必要がありますが、ソーシャルリスニングでは制限を設定する必要はありません。

個が尊重され、多種多様な嗜好や意見が存在する今、生活者に寄り添ったマーケティングが重要視されています。それを実現する手法として、ソーシャルリスニングが注目を集めているのです。

ソーシャルリスニングを行う5つのメリット

では、ソーシャルリスニングを行うことでどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは5つのメリットをご紹介します。

1.生活者や業界の動向がわかる

ソーシャルリスニングを行うメリットのひとつ目は、商品名やカテゴリ名(例えば「グミ菓子」など)といった特定のキーワードにおける口コミ情報を収集することで、そのキーワードに関する動向がわかることです。同一キーワードで定期的に実施することで、商品に対する消費者のニーズや時期による投稿数の増減、また、業界の動きなどが読み取れるため、例えばキャンペーンや広告の実施時期を検討する際の参考にできるでしょう。

2.口コミや評判など生の声が聴ける

日常の中でソーシャルメディアに接していると、さまざまな人の意見に触れることが多いのではないでしょうか。アンケートなどと違い、特定の誰かに向けたものではないソーシャルメディアにおける発言は、比較的本音を発信しているケースが多く見られます。おそらく、自分自身のことを振り返ってみても、ソーシャルメディアでの発言はそうした傾向があると思い当たることでしょう。Twitterなどの匿名性の高いものは特にその傾向が強く出ます。また、調査対象のボリュームが大きいことも魅力です。生活者の忌憚のない意見を数多く聴くには最適なマーケティング・広聴手法といえるでしょう。

口コミイメージ

3.ブランドイメージがわかる

ソーシャルメディアにおける生活者の発言には、自社または自社の商品・サービスのイメージに関するものも多くあるでしょう。こうしたところから、実施しているブランディング活動の成果を見ることができます。もし、自社と生活者が持つブランドイメージに乖離がある場合、その認識の違いを解消するための次なる活動につなげることができます。

ソーシャルリスニングで得られた広聴結果をブランド責任者やマーケティング担当者と共有し、ブランディングの活動プランの見直しなど、次のステップに活かしましょう。情報発信(広報)だけでなく、その情報がどう受け止められているかを把握・認識(広聴)することで、自社が目指すブランドイメージにより近づくブランディング活動を実現できます。

4.潜在的なリスクを検知できる

ソーシャルリスニングは危機管理にも活用できます。ソーシャルメディアにおける自社や自社商品・サービスに対して指摘や、風評被害につながりそうな発言をチェックしてリスクを想定すれば、リスクが顕在化しないうちに対処することができます

例えば自社の製品に対する「〇〇かもしれない」といった、最初は生活者の想像の域を超えない発言であったとしても、情報が拡散されていくうちに「〇〇らしい」「〇〇だそうだ」と、あたかも信憑性がある情報のようになることもあります。その場合は、商品パッケージやプロモーションに誤解させるような表現がないかを確認し、表現の改修やリスク回避のためのプロモーションなど、先んじて手を打つことができるでしょう。

5.プロモーション施策の評価や成果がわかる

大きなプロモーションを打ち出したときはさまざまな形で反応が見られるものですが、ソーシャルメディアにおける反応も見ておきたいところです。特に大きな露出を行ったときは、ソーシャルメディアでの関連発言も多くなります。普段以上のボリュームの発言数を活用した分析が可能となります。プロモーションを目にした生活者のリアルな意見を聴く絶好の機会となるでしょう

ソーシャルリスニングを行う2つの方法

では、実際にソーシャルリスニングを行うには、どのような方法があるのでしょうか。ソーシャルリスニングには、大きく分けて2つの方法があります。まずはどんなものなのかを試してみたい、しっかり大規模に調査したいなどのステージに合わせて検討してみてください。

1.メディアの検索窓でキーワードを検索をする

ひとつ目は各種ソーシャルメディアやインターネットに設置されている検索機能を使って行う方法です。これらは無料ですぐに利用することができ、自社内で小規模実施する際や、まずはコストをかけない形で試してみたい、といったフェーズに活用する場合が多く見られます。

1.Yahoo!リアルタイム検索

検索サイト「Yahoo!」のトップページに設置されている検索窓を使用して行います。検索窓の上にある「リアルタイム」をクリックするか、検索したいキーワードに「なう」をつけて検索すると、Twitter内の関連ツイートをピックアップします。「うれしい」「こわい」などのワードを一緒に検出することで、特定のトピックスにおける感情の推移を見ることもできます。

参考:Yahoo!リアルタイム検索 – Twitter(ツイッター)をログインなしで検索!

2.Googleトレンド

検索サイトGoogleが提供する無料ツールです。特定のキーワードやトピックがGoogle内でどのくらい検索されているかを確認することができます。「調べる」機能を使えば検索結果を視覚化することも可能です。また、期間を指定すれば、特定のキーワードやトピックスに対する話題量の推移も算出されます。検索ボリュームが大きなワードを対象とするため、大きなトレンドを把握するのに向いています。

参考:Google Trends

3.Twitterの「高度な検索」

Twitter内のトレンドを見ることができるツールです。twitter.comの検索バーにキーワードを入力し、「高度な検索」を指定して調べます。特徴は対象のキーワードに対象期間の指定やほかのワードを加えることにより複合的な検索結果を得られることです。例えば「対象キーワード うれしい」とすると生活者の心理を図ることができます。ほかにも、対象期間や地域などを組み合わせてさまざまな傾向を読み取ることができます。

参考:高度な検索

4.Instagramインサイト

自社でInstagramアカウントを運用している場合は、アカウント情報のところにある「Instagramインサイト」から自社アカウントのフォロワー属性や投稿に対するアクションを見ることができます。口コミ情報の収集・分析は「ハッシュタグ分析」で行います。自社の商品・サービスなど対象キーワードのハッシュタグを収集し、その拡散度合いをリサーチします。自社の商品名・サービス名がどのようなワードと一緒に拡散されているかをテキストマイニングすると、効果的なハッシュタグワードを見いだすことができます。

Instagramインサイトを使うにはプロアカウントでの開設が必要です。一般のアカウントからの切り替えも簡単にできますので、自社の公式アカウントを運用している場合にはぜひ活用しましょう。

2.有料ツールを使ってデータ収集・分析までを行う

有料ツールには、調査から分析はもちろんのこと、調査結果から導き出した施策の実施サポートや、その成果分析レポートまでを一貫して出せるものが多数あります。多数のメディアを対象としたものもあれば、特定のメディアに特化したものもあり、自社の施策に合わせて選ぶことができます。

ソーシャルリスニングにおける大きなポイントは調査データを分析することです。自社内で十分な分析作業ができなさそうであれば、有料ツールを活用してみるのも手です。また、有料ツールには各種サポート機能が付帯していることがほとんどのため、どう手をつけてよいかわからない、無料ツールで実施する手間がかけられないなど、自社の状況によっては相談してみてもよいのではないでしょうか。

ソーシャルリスニングを行うときの4ステップ

実際にソーシャルリスニングを行うには、どのように進めるのがよいのでしょうか。ここでは大きく4つのステップに分けてご紹介します。

STEP1.「知りたいこと」を明確にする

まず、調査の目的を明確にすることが大切です。何のために行い、結果をどのように生かすのかを調査前にきちんと確認しておきましょう。「やっぱりあれもやりたかった」と途中で目的がぶれるようなことがあると、後の調査の進行にも大きく影響します。

STEP2.調査対象メディアを選定する

調査の目的が明確になったら、対象メディアの選定をします。情報源の選定をするときのポイントは、「そのメディアに欲しい情報があるか」「信頼できる情報か」「タイムリーな情報であるか」です。例えば自社商品に対する調査をする際に、購入・未購入関係なく広く意見を集めたい場合はTwitterを情報源としてもいいかもしれませんが、購入経験のある人を対象にしたい場合は、例えばTwitterでも商品についてのツイートが存在する自社の公式アカウントや顧客サービスログなど、購入済みの人の発言が多そうなメディアやアカウントを調査対象とするほうが効率的でしょう。

単に人気があるから、たくさんの情報が集まるから、という理由で選択するのではなく、調査目的を達成する情報が収集できるメディアを検討しなければなりません。

STEP3.キーワードを選定のうえ、データを収集する

データ収集に先立ち、キーワードを選定します。欲しい情報をきちんと集められるかは、メディア選定に並んでキーワード選定も大きく影響します。調査対象がどういったワードと関連が深いかを事前に確認し、いくつか考えてみましょう。

対象メディアとキーワードが確定したら、実際の情報収集に入ります。事前に検討した有料ツール・無料ツールを活用し、データを収集しましょう。万が一、想定したボリュームの情報量が入手できない、選定したキーワードでは欲しい情報が得られなさそうだなどの感触があれば、再度メディアとキーワードを検討するなどしましょう。

STEP4.データの分析をする

収集したデータを分析します。有料ツールで調査を行った場合、分析もできることがほとんどのため効率的に行えるでしょう。

発言の件数だけではなく、それらを「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」に分けるなど細分化し、具体的に何に対してポジティブなのかを深掘りするなどします。また、ソーシャルリスニングにおいては、数値データをベースとする「定量」とその背景や原因を示す「定性」の両方の分析を行うことが大切です。

データ分析イメージ

1.数値分析

まず、収集したデータを数値観点で分析します。数値分析の段階では「投稿数」「リーチ数」「ポジティブ・ネガティブ・ニュートラル」の3つの数値を出していきます。

数値を見ることで、調査対象に対するSNSユーザーの大まかな動きを知ることができます。例えば投稿数の変遷を時系列で追っていくと、投稿が増えたところでは広告との連動効果や時期的にニーズが上がるなどの関連性が見えてきます。

次に、各投稿がどれほどの人に見られているかを確認していきます。投稿数が多くても、それらが拡散していなければ影響力はありません。そこで、各投稿を行ったアカウントのフォロワー数を確認していきます。そこから、指定のキーワードを含む投稿がどれだけの人にリーチしているかがわかります。投稿数自体は少なくても、フォロワー数の多いアカウントが含まれている場合、そのアカウントからの投稿は多くの人に見られている可能性も考えられます。

最後に投稿された内容がポジティブなのかネガティブなのか、またはニュートラルなのかを見ていきます。自社の商品・サービスなどのキーワードが含まれた発言の、ポジティブ・ネガティブの割合を見ることで、どんなイメージで見られているかをざっくりと知ることができます。また、ここでも時系列の推移や競合との比較をしていくことで、より背景を見いだすことができるでしょう。

このように、数値分析では大まかな動向を把握していきます。

2.アカウント分析

次に、投稿アカウント軸で見ていきます。影響力のあるアカウントや頻出しているキーワードの抽出を行うことで、定性的な視点からの傾向値を把握できます。

1でも見ていきましたが、フォロワー数の多いアカウントや、反応(FacebBookのシェア、Twitterのリツイートなど)の多いアカウントを抽出し、それらの傾向を見ていきます。その投稿の内容を見ることで、例えば拡散されやすいキャンペーンにつながったりするでしょう。また、影響力の強いアカウントの傾向を分析することで、ターゲットを絞った施策を打ち出すこともできます。

さらに、ツールによっては頻出キーワードの抽出が可能なものもあります。自社商品名を含む投稿の頻出キーワードがどんなものかによって、例えば購入の動機や場所などを洗い出せたりするのです。また、ポジティブなものだけでなく、ネガティブワードや競合ワードなども一緒に抽出することで、自社の弱点や改善点などが見えてくるでしょう。

3.セグメント分析

最後に、1、2で分析してきたデータを、さらにセグメント分けして見ていきます。例えば、「何を見て投稿したか」や「投稿者の関心度」などに分けていくことで、より生活者の動向がイメージしやすくなるでしょう

例えば、関心度を「興味」「関心」「購入」の3段階に分け、それぞれの投稿を「ポジティブ」「ネガティブ」に分類します。キャンペーンや広告施策を投じた後の投稿で「購入」×「ポジティブ」に分類されるものが多い場合、その施策は成功していると判断できます。

STEP5. 次の企業活動に活かす

広報活動では、「情報発信(広報)」と「ソーシャルリスニング(広聴)」を繰り返し、都度成果を確認するPDCAが欠かせません。分析したデータは、次の企業活動に活かしましょう。

ソーシャルリスニングで得られた情報は、自社が発信している情報が社会にどのように届いているかの表れです。自分たちの活動が想定する結果を生み出しているかを確認し、次の計画に反映します。また、ソーシャルリスニングは、広報やマーケティング活動のみならず、商品・サービス開発などさまざまなことに反映できます。

ソーシャルリスニングを成功させる3つのポイント

ソーシャルリスニングを行うメリットやその実施ステップを見てきました。では、ソーシャルリスニングを成功させるには、どのようなポイントを踏まえるべきなのでしょうか。押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

ソーシャルリスニングイメージ

ポイント1.調査目的を明確にする

実施のステップでもご紹介しましたが、その後の調査に大きく影響する重要なポイントです。何のために行うのかを明確にしましょう。マーケティングにおいては非常にベーシックですが、4P(商品・価格・販売促進・流通)を軸に考えるとよいでしょう。「どんな商品が求められているのか」「価格についてどう感じているのか」「どんなプロモーションが好印象なのか」「どこで購入したいと考えているのか」など、具体的な落とし込み先を考えていくと目的が定まってきます。

また、この段階で属性が重要な調査となりそうな場合、ソーシャルリスニングは適していません。Twitterは多くのデータを収集できるものの匿名性が高く、ほかのSNSもプロフィールの正確性が低い傾向があります。そのため、属性を特定したいときにはアンケート調査を選択したほうがよいでしょう。

ポイント2.適切なキーワードを選定する

ソーシャルリスニングではデータ抽出の元となるキーワード選定も重要な要素です。漠然としたキーワードを選ばないようにしましょう。

単一のキーワードだけでなく、メインキーワードとサブキーワードとの組み合わせで考えるとよいでしょう。例えば商品Aの触り心地の評価について調べたい場合、「商品A」だけで抽出すると不要な情報まで収集してしまいます。この場合、メインのキーワード「商品A」と触り心地に関連するサブキーワード「触り心地」「ふわふわ」「ごわごわ」などを組み合わせると、調査目的により近しい情報を集めることができます。リスク回避を目的とした調査であれば、ネガティブワードをサブキーワードに持ってくるなどします。

ポイント3.否定的な意見に振り回されない

ソーシャルリスニングは、フィルターのない意見を聴くマーケティング方法として注目されています。生活者は一個人の意見として忌憚のない意見を投稿しているため、収集したデータの中には当然ネガティブな意見も入っています。否定的な意見は目につきやすいものですが、全体の中のどのくらいを占めているのか、今回の調査目的において加味すべきものなのかをきちんと判断することが大切です。

ソーシャルリスニングで聴いた「生活者の声」をビジネスに生かそう

注目のマーケティング・広聴手法「ソーシャルリスニング」について見てきました。情報やモノ・コトがあふれる現代において、より生活者に寄り添ったサービスを提供していくためには、「生活者の生の声」を聴くことはますます重要視されるでしょう。

しかしソーシャルリスニングで活用されるソーシャルメディアは、ある意味きちんとしたルールのない中で多種多様な人が接しているものです。ソーシャルメディアに起因する事件なども発生するくらいに、その自由度には良い面・悪い面があります。

調査で収集した「声」に振り回されるのではなく、自社の発展・事業展開に活かしていくためには、最初に設定した目的を見失うことなく冷静に分析し活用していくことが大切です。

ソーシャルリスニングに関するQ&A

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この記事のライター

戸所 奈央

戸所 奈央

新卒で大手人材サービスグループに入社、人材ビジネス以外の各種プロジェクトに参画の後、同グループの海外ブランドアパレルの輸入販売・外販部門にて広報を担当。1998年より同グループの技術系人材派遣・紹介を行う子会社に異動、広報として15年従事する。2015年よりフリーランスとして活動、若手広報担当者の育成や各種ライティング業務などを通じ、企業の広報活動を支援している。

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