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地方創生とは?プロジェクト事例7選から学ぶ、成功のポイントをわかりやすく解説

2040年までに消滅する恐れがある市町村が896ほどあるといわれるように※、日本には消滅可能性都市が数多く存在しています。各地方自治体は移住の推進、人材支援などを通して人口の偏りを解消する施策を実施。

地域の魅力をPRすることは、東京への人口集中を分散させる効果にもつながります。産官学連携で取り組む施策もあるため、企業や学校法人など多くの方々に深く関係するトピックになるのではないでしょうか。

そこで、地方創生事業に携わる方、関心がある方に向けて、地方創生PRを成功に導くための基礎知識やポイントをわかりやすく解説します。

※2014年、日本創成会議・人口減少問題検討分科会発表

地方創生とは?

地方創生とは、地域の魅力を引き出し活性化させることで持続的な社会を創る活動の総称です。日本で進行する超高齢化社会と人口減少が引き起こす課題に対して、各自治体が各々の施策に取り組んでいます。

参照:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 内閣府地方創生推進事務局

地方創生とは?

地方創生が重視されている3つの理由

地方創生が注目されるようになった理由を、昨今の情勢も踏まえプラスとマイナスの両側面から解説していきます。

理由1.地方から都内への人口流出

日本総人口の減少に加え、働く世代が都内に流出することで地域の過疎化が進行しています。地域人口が減って高齢化すると、経済活動が減退して地域の発展、存続が難しくなるでしょう。こうした課題を解決するために、地方の魅力を生かして注目を集める取り組みが重要になっています。

理由2.リモートワークの普及

新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークが浸透し、場所にとらわれず働ける環境を整備しやすくなりました。同時に地方へオフィス移転や移住をする動きが活発になり、地域資源が豊富で都内よりもコストがかからない地方の活用に注目が集まっています

理由3.リソースと資源が豊富

地方は開発や都市化が進んでいない分、都内に比べて伝統的な産業や文化、自然に恵まれています。簡単に再現できない歴史文化や自然があるからこそ、現存する地域資源を使った価値ある事業や取り組みによってリターンを得ることが可能です。

地方創生の取り組み成功事例7選

地域の魅力を定義し、PRに成功している事例を紹介します。長期的に結果が出続けるかはわからないため、成功要因を理解して活動に取り入れられる内容を参考にしていきましょう。

事例1.長野県阿智村

阿智村はブランディングに成功している地域のひとつです。「日本一の星空の村」として知られ、「日本一の星空ナイトツアー」には年間約6万人が訪れます。そんな阿智村の中心地である昼神温泉は、認知度が高くありませんでした。地域の魅力を再発見しようと、ほかにはマネできない資源を探した末、地元住民に愛されている星空に着目したのです。

星空を舞台にした企業とのコラボレーションイベントを開催するなど、自然の資源を生かして地域の魅力を広めています。

参考:カメラブと「長野県阿智村」のスタービレッジ阿智誘客促進協議会がパートナー協定を締結 

事例2.福井県鯖江市

福井県鯖江市は、メガネフレームの国内生産シェア96%を誇るメガネの産地です。工程ごとに職人が腕を振るっており、1981年に世界初のチタン金属を用いたメガネフレームを製造したことにより、鯖江めがねブランドはより強固なものになりました。

メガネが大量生産・低コスト化する2000年代から本格的なブランディング・PRを推し進め、「めがねミュージアム」を開設したり、「めがねフェス」を開催したりとメガネを知り、身近に感じることができる活動をしています。

中でも鯖江めがねのクオリティを担保するのに貢献したのが「THE291」です。産地統一ブランドをつくり、審査委員会を結成してブランドの価値を高めるだけではなく、国際的にも情報を発信し続けています。

事例3.島根県海士町

島根半島から約50kmに位置する海士町は、「なくてもよい」「大事なことはすべてここにある」の2つの意味をこめた「ないものはない」というスローガンを打ち出し、一貫した施策を行っています。

住民が中心となってつくった町の方向性をまとめた冊子「海士町をつくる24の提案」は、グッドデザイン賞を受賞しました。ほかにも、島内の公立高校が学区制を廃止して全国から入学生徒を募集する地域留学を行っており、東京や海外から地域体験の希望者が町を訪れています。

事例4.徳島県上勝町

ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)といえば、徳島県上勝町の名前を挙げる人は少なくありません。2003年に全国に先駆けて焼却・埋め立てごみをなくす「ゼロ・ウェイスト宣言」を出し、2021年度ふるさとづくり大賞で最優秀賞(内閣総理大臣賞)を受賞しました。

上空から見るとクエスチョンマークの形をした「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」はごみの分別拠点で、不用品の持ち込み、持ち帰りができるリユースショップや体験型宿泊施設「HOTEL WHY」を併設しています。ごみの総量削減とリサイクルに取り組む同町は、自治体によるごみ回収がなく、町民がごみを持ち込み、45種類に分別します。

地域活性型農商工連携のモデルとなる、葉っぱビジネスとして映画化された「つまもの」の生産・販売を行う企業も話題になりました。

事例5.石川県金沢市

コンパクトな地理特性を生かして、シェアサイクル事業に積極的に取り組んでいるのが石川県金沢市です。金沢市では2010年頃から公共レンタサイクルの実証実験を繰り返し、2015年の北陸新幹線の開業に合わせて「まちのり」を2021年にスタートさせました。

独自のツアーに限らず、鉄道などの公共交通やスポーツチームと共同で企画を立てたり、商店街と連携したクーポン券を発行したりした結果、年10万回以上利用されるサービスになっています。地元住民の利用や自転車の老朽化など課題はあるものの、デメリットとしても捉えられるコンパクトな地理をうまく活用している事例です。

事例6.瀬戸内

瀬戸内でも岡山県と香川県にまたがるエリアでは、「瀬戸内国際芸術祭」を開催して瀬戸内海の島めぐりを促しました。島に浮かぶ南瓜のオブジェ(草間彌生氏作)が印象的な香川県直島を中心に、島をまるごと美術館に見立て、認知度を上げた事例です。

かつては豊島の産業廃棄物問題や大島のハンセン病患者隔離問題などマイナスなイメージがあったエリアですが、2004年頃から瀬戸内海の島々やアートをめぐる構想を立て、「海の復権」をコンセプトに地元大学や事業者と協働して人気を集め、進化を遂げています。

事例7.新潟県三条市

アウトドアグッズの聖地として知名度を上げている燕三条は、既存資源を有効活用している地域です。もともと金属加工の工場が多数あるものづくりがさかんな地域ですが、低コスト、大量生産など市場の変化により閉業が増えていました。

三条市は、ものづくりの現場を開放して見学・体験できるイベントとして2013年から「燕三条 工場の祭典」を開催。初年度から1万人の動員に成功し、2019年には出展企業113件、来訪者は5万人以上となりました。祭典をきっかけに三条市はものづくりの町という認知が広がり、職人になりたいという若者が地域外から訪れたり、職人さんが積極的になったりといった変化が見られるようです。

参考:Tsubame-Sanjo Factory Museum 開幕直前情報 <学ぶ、KOUBA!ものづくりを知る17日間

地方創生を成功させる5つのポイント

地方創生に携わるうえで参考にしたいポイントを押さえておきましょう。

ポイント

ポイント1.地域資源をそのまま生かす

使われていない場所を使ったり異なる使い方をしたりと、工夫次第で地域が持つ資源は魅力的になります。新しいホテルやマンション、アミューズメント施設など開発コストをかける方法もありますが、施設を維持するのに必要なコストやノウハウが考慮されないがために、世の中の変化に追いつけず廃墟と化す場所が出てきているのも事実です。

既存資源を有効に生かして地元事業者や住民に負担がかからない施策づくりをするためにも、既存の地域資源をどう活用するのかが重要になります。

ポイント2.人材マッチングを積極的に行う

地域とさまざまな関わり方をする人々を指す「関係人口」を創出するためには、スキルや熱意を持った人材と地方をマッチングする機会が必要です。

地域が持っている課題や魅力を包み隠さず公開し、協働できる事業やプロジェクトの情報を発信する場を設けていくなど、積極的に機会創出をして地域で活躍できる方々と出会い、力を合わせていきましょう。

ポイント3.ほかの事例やスキームをそのままあてはめない

地域の魅力や課題はそれぞれ異なるので、ほかの地域で成功した事例をそのままあてはめるのはおすすめしません。成功要因を細かく理解するのはもちろん、リソースやコストを鑑みて、参考にできる部分を取り込む必要があります。

ポイント4.中長期にわたる計画を立てる

地方創生では、長期的な計画を立てたうえで調整を重ねながら地道に関係構築、活動を行うことが求められます。特に予算を使うプロジェクトは短期的な結果を求めたくなりますが、目的を見失っては元も子もありません。

しっかりとストーリーを設計し、魅力を誰にどのように伝えるのか、地域の課題と独自の強みを慎重に議論しながら中長期的な計画を立てましょう。

ポイント5.人口増加というゴールに固執しない

地方創生の課題は人口減少にありますが、地方の人口を増やすことに固執しすぎると魅力的なまちづくりという本来の目的からはずれる可能性があります

地域の魅力を知ってもらい、そこで生活するイメージを持ってもらう、地域への関心を高めてもらう施策のほうが、助成金や優遇措置を充実させるよりも定住につながるのではないでしょうか。

日本の課題の解決につながる地方創生は中長期的なプラン設計が重要

日本が直面する人口減少、都内への一極集中に対応するかたちで地方創生が注目されています。地方創生事業やPRに携わる際は、その目的や意義に注意しながら各事例を参考に、オリジナルの施策を立てていくことが重要です。

自治体、地域住民、地元企業や教育機関などステークホルダーが多いため調整力が求められますが、なるべく地域に無理を強いない施策を生み出すことで、持続的かつ効果的な活動につながるでしょう。

社会的意義ややりがいのある活動の半面、地道で長期的な活動になる地方創生。この活動に携わる方々にとってひとつでも参考になると幸いです。

地方創生に関するQ&A

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この記事のライター

坂下 彩花

坂下 彩花

合同会社KOUYO代表。スタートアップ企業で広報と人事を兼務しながら、広報業務を一通り経験。提供する情報がない中での企画作り、メディアアプローチが強みです。これまでの広報経験を生かして広報担当者さんの役に立ちたいと思いPRTIMES MAGAZINEに参画。現在シェアハウスの愉快な仲間たちと賑やかに暮らしています。

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