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発表のたびにプレスリリースランキング首位。PR TIMESを知り尽くした「かつや」広報の秘策

SNSやPR TIMES上で話題になったPR事例の裏側に迫る本連載。今回は、日本全国で展開している人気とんかつチェーン店「かつや」(アークランドサービスホールディングス株式会社)の広報担当鈴木さんにインタビューしました。

PRTIMESプレスリリースランキング1位「かつや」

PR TIMESでプレスリリースを配信すると、ほぼ必ず「今日のランキング」で1位にランクインするというPR TIMES上級者の「かつや」さん。プレスリリースをきっかけとした記事掲載も多く、Twitterなどでも話題になっています。そんなかつやさんの広報活動と「ランキング上位に入るための施策」について聞いてきました。

アークランドサービスホールディングス株式会社の最新のプレスリリースはこちら:アークランドサービスホールディングス株式会社のプレスリリース

アークランドサービスホールディングス株式会社 社長室 広報担当マネジャー

鈴木 恵美(Emi Suzuki)

1983年生まれ。食べることが好きで、学生時代は栄養士免許を取得。新卒で弁当・惣菜販売店を運営する企業に入社。店長や複数店舗管理等10年の店舗運営を経て、2014年から経営戦略部にて社長秘書と広報を担う。2018年、採用へのジョブローテーションを機に「広報を極めて企業に貢献したい」と考え、2019年8月アークランドサービスホールディングス株式会社に社長室・広報担当マネジャーとして入社。

被リンク数を増やし、PR TIMESの記事に流入を集める

── 鈴木さんは、ホールディングス全体の社外広報をほぼ一人でご担当されているんですよね。

鈴木:はい。プレスリリースの作成・配信、SNSの運用、取材などのお問い合わせの一次対応を主に担当しています。

── ホールディングス全体で16のブランドがあるとのこと。情報はどのようにキャッチアップしているんですか。

グループ全体で週一回、定例会議があるので、議事録をとる」という名目で参加し、今後の予定や新メニューの開発状況などを確認しています。発表時には各事業部長や開発担当者と連携してプレスリリースの原稿を作成しています。

── かつやさんは、ニュースリリースを発表するたびに、ランキング上位に入っていますね。ずばり、その秘訣を聞きたいのですが……!

常にPRTIMESのランキングで5位以内に入ることを意識しています。会社から言われてやっているというよりは、自分の中で立てた目標なんです。

秘訣、ですか(笑)。そんなに複雑なことではないんですが……例えば、シンプルですが、発表したニュースをたくさんの方に見ていただくために「被リンク数」を増やすことは意識しています。
コーポレートサイトのお知らせ欄に、配信サービスで発表したプレスリリース文書と同じ原稿をアップしている企業さんは多いですよね。当社では、その作業を省いて、お知らせ欄からPR TIMESに直リンクしています。コーポレートサイトから離脱することをあまり気にしていないのでできる施策かもしれません。

同じように店舗検索サイト(NAVITIME)上の「お知らせ欄」や店舗詳細ページにも直リンクを置いています。それから、発表後には、PR TIMESのページをTwitterで拡散しています。

「かつや」広報01

メディアの方への直接送付や投げ込みといったメディアアプローチは一切行なっておらず、本当にPR TIMESでの配信だけが発表の場なんです。そのため、できるだけPR TIMES上のページへの注目度を高め、少しでも流入を増やすのが目的ですね。

「つっこみドコロ」で話題の連鎖を作り出す

── 直接送付も投げ込みもナシ。それでも毎回、さまざまなメディアに取り上げられ、記事が掲載されていますよね。

はい。ありがたいことに、毎回取り上げてくださるライターさんもいたりして……。お礼の気持ちを込めて、書いていただいたときには元記事を公式アカウントのTwitterで拡散しています。でも、裏を返せばそれくらいしかメディアさんとのコミュニケーションは行っていません

── 読んだ人が思わずSNSで拡散したくなる、あるいは記事にしたくなるリリースにするために工夫している点はありますか?

本文は長くなりすぎないように気をつけています。

それから「WHY」をできるだけ入れること。
通常、プレスリリースを準備する際に現場から寄せられる情報は「販売時期」「価格」「商品説明」など。それだけでなく、企画時の裏側や、開発者のこだわりをきちんと載せる、ということですね。

「シリーズ化」を提案することもあります。バラバラに発表するより、「〇〇企画・第〇弾!」という形でお届けした方がピンときてもらいやすいこともあるので。

あとは、お客様や記事を書いてくださる方に面白がってもらえたらいいなということで、私たちらしさを強調した企画にすることも。例えばかつやであれば「唐突感」や「ボリューム感」などを意識してつっこみドコロを作っています。

「かつや」の商品

たとえば、9月30日に期間限定で発売を開始した『~合盛りシリーズに煮込みメニュー!「豚すき煮肉うどんチキンカツ」が期間限定で登場~』(2020/9/30)は、白米の上に豚バラ肉・チキンカツ・うどんが乗った「全力飯」の代名詞ともいえるメニュー。

このプレスリリースを見たメディアや生活者からは「悪魔合体メシ」「頭の中がバグった」などの声が寄せられ、そのボリューム感への“ツッコミ”を楽しんでいただきました。

参考: 2020年9月30日 ねとらぼ『かつやの悪魔合体メシ「豚すき煮肉うどんチキンカツ丼」10月発売 肉×肉×炭水化物×炭水化物』

実は、以前は「こう書いてほしい」という想いが先走っていた部分もあったんです。でも、全部説明してしまうと面白くなくなってしまうな、と気づいて。そこでプレスリリースでは淡々と伝えることを意識し、取り上げ方はライターさんや記者さんにお任せすることにしました。
とは言いつつ、「あのライターさんならここにきっとツッコんでくれるだろうな」など、想像しながら書いている部分もありますが(笑)。

── リリースの「見せ方」は意識していますか?

「かつや」広報02

まず、メインビジュアルの作り込みですね。あまり情報量が多くなりすぎないように作っています
メニューの写真にあわせて入れるのは、インパクトを持たせた商品名と価格くらい。キャッチコピーなども入れたくなってしまうんですが、一覧で表示されることを考えると小さな文字を入れてもうるさいだけ。並んだバナーの中で目立つように意識しています。

それから、タイトルでしょうか。長くなりすぎないようにして、SNSなどで拡散されたときに伝えたいことが確実に伝わるように重要なキーワードは前半にくるようにしています

── Twitterも鈴木さんが運用していらっしゃいます。心がけていることはありますか。

そうですね。かつやのTwitterアカウントでは「エゴサが趣味です!」と公言しているくらいで、店舗名などでのTwitter内検索は日々行なっています。投稿を見つけたら、いいねやRTで何かしらアクションするようにしています。

いつも反応してくれる方や記事を書いてくださるライターさんとの交流の機会として大切にしていきたいなと。広報活動って「安く(もしくは無料で)できる広告」のようにとらえている方もいると思うんですが、私は貴重な「ファンコミュニケーションの場」だと考えています

情報とアイデアが集まってくるPRパーソンになるために

── PR TIMES、SNSともにとてもうまく活用されているように見えますが、これは最初から?

全くそんなことはなくて。入社して1年2ヶ月ほどになりますが、入社した頃はコーポレートサイトも運用しにくく、サイトデザインも長期間更新していなかったので、お客様がアクセスしてくださっても情報にたどり着くのが難しいユーザーインターフェイスになっていました。SNSも活用し始めるタイミングだったので、自社に合うやり方を模索し続けた日々でした。

「かつや」広報03

決して情報発信の重要度が低かったわけではなかったと思うんです。でも、当時は専任広報もいなかったので限られたリソースの中でできることをしたいと考えていくと、店舗の運営など、お客様に近いところを優先せざるを得なかったと聞いています。

ホールディングス全体の情報発信をより効率よくできるよう広報専任者として採用していただいたので、日頃の情報発信活動を進めながらコーポレートサイトなどの刷新も行いました。流入を増やすだけでなく、訪れてくれた方のユーザービリティも意識していかないと、情報をより広く伝えていくことはできません。両輪を回しながらなんとかここまできた感じです。

── 冒頭で、「ランキング上位に入ることは自分で立てた目標」とおっしゃっていましたが、社内で広報活動のKPIはあるのでしょうか?

当社では広報活動の数値目標はないんです。数字で測れるものではない、ということを経営陣が理解してくれています。

目的はあくまでも「顧客を増やすこと」。私たちはよく「全員で『飲食業』を営んでいる」という言い方をします。お客様の求めているものを、各自が自身の持ち場で提供していく、その繰り返しだと。広報としては、情報をより多くのお客様に届け、認知拡大と想起につなげることをいつも意識しています。

いつも心がけているのは、広報活動はたくさんの方に協力してもらって成り立つものだということです。ですから「露出が増えればいい」という考え方は捨て、例えば取材の依頼を受けるにあたっても、リーチしたい対象に届けることができるのかなどは精査するようにしています。貴重な時間を割いてもらうものですからね。

また、社内での報告もできるだけ欠かさないようにしています。Twitterのフォロワー数や、その週にあった取材依頼、その他の活動報告や今後の予定などは、聞かれなくても毎週の全社定例時に報告しています。

オフィスの様子

当社のオフィスはワンフロアですぐに各事業部長とコミュニケーションが取れるような環境なので、嬉しい投稿や記事などは、「これ見てください!」と言いにいったりもします(笑)。そうしたこまめな共有を続けていると、自然と広報活動に必要な情報やアイデアが集まってくるようになりました。

── 同じように広報として奮闘する人にアドバイスするとしたら?

広報の仕事は、多岐に渡るもの。「何から手をつければいいんだろう?」と悩むのではなく、「全社で取り組むことの効果を最大化するにはどうすればいいか」と逆算思考で考えていくと自然と優先順位が見えてくるかもしれません。

そしてなによりも、広報って面白いですよね。行動次第で自社の商品やサービスが認められたり、社内のメンバーのモチベーションにもつながる。一緒に楽しみましょう、と言いたいです!

「かつや」広報04

── ありがとうございました!

今回のPR事例ポイント

  • 情報発信源をPR TIMESに集約した、拡散されやすい体制づくり
  • プレスリリースに「つっこみドコロ」を設けてコミュニケーション
  • 数値目標がないからこそ、自分で目標を設定。報告も欠かさない

実は、今回印象に残ったのは、PR TIMESハックのTipsよりも鈴木さんの「熱量」でした。もともとかつやの大ファンで、日頃からよく食べに行っていたという鈴木さん。以前から広報・PRの仕事をしていたこともあり、店頭で「この情報、もっと届けられるのにな」「知っていたら早く食べに来たのに!」ともったいなさを感じる場面が多々あったそう。

「食」ネタは炎上することも多く、担当者は気を使うもの。でも、自身もユーザー視点とファンの視点を持っているからこそ、誰かに話したくなる/ついツッコミを入れたくなる、「愛される」企画につなげることができるのだなと感じました。
自社の製品やサービスを誰よりも好きでいる。シンプルではありますが、広報やPRにかかわる人は忘れてはいけないことだなと再確認したインタビューでした。

(撮影:原 哲也)

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この記事のライター

青柳 真紗美

青柳 真紗美

ビジネス書の編集者から広報PRパーソンへ。AI系スタートアップや不動産テック企業のPRなどを経て、現在フリーランスで広報・PR支援をしています。メディアリレーションからオウンドメディアの編集まで「コミュニケーションを考える」のが大好物。特にニッチ領域のサービス・プロダクトが好き。「みんなが嬉しい広報・PR」をモットーにその企業の「らしさ」を届け、ファンを増やすお手伝いをしています。

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