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昆虫食コオロギで話題。メディアが注目するグリラスの広報PR

徳島県出身、徳島大学大学院修了後、徳島大学農工商連携センター特任助教などを経て、徳島大学バイオイノベーション研究所講師を務める渡邉崇⼈さんは、2019年に食用コオロギに関連する品種改良・生産・原料加工・商品開発・販売を行う株式会社グリラスを設立しました。

この数年で「昆虫食」「コオロギ」というワードを耳にするようになり、店舗でコオロギの食品も見かけるようになりました。どのような活動が話題につながっているのでしょうか。

「なかなか一般の人に知られておらず、いかに伝えていくかに心を砕いています」と語る代表取締役CEOの渡邉崇⼈さんと広報を担う川原琢聖さんにお話を伺いました。

株式会社グリラスの最新のプレスリリースはこちら:株式会社グリラスのプレスリリース

株式会社グリラス 代表取締役CEO兼CTO

渡邉崇⼈(Watanabe Takahito)

徳島生まれ徳島育ち。学士から博士までの全課程を徳島大学で過ごし、現在は徳島大学バイオイノベーション研究所の講師として昆虫の発生・再生メカニズムを専門に研究を行う。また2019年に株式会社グリラスを設立し、CEOとCTOを兼務する。

株式会社グリラス PR & Sales Manager

川原琢聖(Kawahara Takuma)

大学卒業後、新卒で都内PR会社に入社。
2021年7月にグリラスに広報として入社して以降は、基本広報業務に加えてマーケティングやセールス関連のイベント企画・運営などを行う。

情報を届ける重要性を起業前から実感

昆虫食「コオロギ」で有名なグリラスの広報体制

── 現在、どのような組織体制で広報PR活動を行っていますか。

渡邉さん(以下、敬称略):広報PRのチームは基本的にマーケティング部門の中にあり、チーム内には川原と池田というメンバーの2人が進めています。

川原さん(以下、敬称略):実は、マーケティングの管轄と別に、CMに出ていたCFOの柿内が管轄しているコーポレート部門にも属している形になります。結果、どちらからもあんまり干渉されないという状況ですね。自由度が高いので、新しいことにも積極的に取り組めています。

── 新しいことにも積極的に。広報施策として取り組む数も多いのでしょうか。

川原:多いと思いますよ。特徴のひとつが、各地域ネタをバシバシ出していっています。「昆虫食」自体が先鋭的な話題なので、注目していただきやすいんですよね。地域やほかの企業とコラボレーションをした販売イベントには、必ずといっていいほどメディアに取り上げていただけます。この販売イベントは一例ですが、提案した企画はほとんど実施できていて、広報としてはありがたいですね。

広報PRの価値を感じ、起業当初から注力

── 起業当初から広報PRに力を入れていこうと思っていたのでしょうか。

渡邉:そうですね。大学の研究者だった段階から、情報を出していくことの重要性を感じていたんですよね。企業の方に情報を見てもらい、注目してもらったことで、共同研究や事業開発のお声がけをいただき、話が進むといった経験をしてきましたので。

特に、最初に感じたのは、2016年に実施した「フタホシコオロギ食用化プロジェクト」のクラウドファンディングのタイミングです。当時は資金調達よりも決意表明という気持ちで行ったのですが、情報を見た新聞記者の方が記事にしてくれて。その新聞の記事が良品計画の方の目に留まったんですよね。

メディアに取り上げられる影響の大きさ

── 無印良品(株式会社良品計画)の店舗でもよく見かけますよね。このタイミングからお話が進んでいたんですね。

渡邉:そうです。実際、良品計画さんと契約を結んだのは2020年ですが、共同開発のお声がけいただいたのは、グリラスの創業前。すでに、コオロギを新たな食材として決めたうえで、共同開発をする相手を探していたときに、私たちの新聞記事を見たそうです。

一方で、私たち自身が情報発信しても、届いてないな、と感じることもあるんですよね。私たちは、あくまでコオロギの会社。一般的な認知がなく、限られた業界からどれだけ発信しても届かないな、と感じていました。そのため、私たちが情報を出して、メディア関係者に注目してもらい、その先の一般の方にも届けないといけない。

このような私自身の経験から、広報PRに力を入れたいという気持ちは創業当初からありましたね。

── そのほか、広報PRを強化したいと思ったエピソードはありますか。

川原:私の入社前に、会社として苦い思いをしたときがありまして。あるメディアで「コオロギフード特集」という企画があったときに、弊社がさまざまな形で携わっている企業や商品ばかりが紹介されていたのですが、私たちの社名は一切触れられなかったんですよね。

生活者の方に向けた商品が紹介されていたので、直接生活者にかかわる企業のみが取り上げられたんだとは思いますが……。

渡邉:見事に私たちが卸していたり、飼育のノウハウ提供の協力をしている企業や商品ばかりだったので、「あれ?」とは思いました。私はそれくらいの感覚でしたが、当時周りの社員の方が悔しがっていましたね。そこから広報担当者の採用に力を入れる事となりました。

株式会社グリラスインタビュー01

徳島と全国、それぞれの話題づくり

徳島ならではを残した広報施策

── 全国に向けた情報発信にも積極的だと思いますが、その際の工夫を教えてください。

川原:ありがたいことに会社の設立以降、徳島県のメディアの方々はたびたび取り上げてくださいました。露出だけを見て、それに甘んじてしまうと、すでに知っている方に同じ情報を届け続けることになるので、私の入社以降は徳島のメディアを大切にしつつ、関東、関西など中央エリアで話題になるような企画を考えるように。

ただ、今は逆の動き。意識しないと、中央エリアに向けたネタばかりになってしまうんです。関東圏での話題は増えてきているため、今は意図的に徳島でのネタを残すようにしています。これは広報戦略というよりも、グリラスは徳島に根を張っている会社、根を下ろす会社としての考えによるものなんです。

── 具体的に徳島でのネタとはどのようなものがあるのでしょうか。

川原:例えばですが、国内で初となる、コオロギを使用した学校給食の導入を進めています。その一環で、徳島県立小松島西高校の学生の方にコオロギ料理を作ってもらうイベントを開催。一種の中間報告として行ったイベントでしたが、ご案内した徳島県のメディア関係者の方は、テレビも新聞もほぼ全社来ていただけましたね。

── 関東圏の話題が増えたということは、昆虫食「コオロギ」が広まってきた証拠ですね。

川原:そうですね。機内食として搭載※1、「ファミマ!!」で取り扱い拡大※2など、まさに関東圏を中心とした話題なんです。他にも渋谷駅周辺で開催したマッチョ30名によるゴミ拾いイベントも、Twitterで「#エコマッチョ」で盛り上げることができましたし、このイベントは、テレビ東京のワールドビジネスサテライト(WBS)にも取り上げてもらい、予想以上の反響がありましたね。

※1 国内初、食用コオロギを使用したメニューが機内食として搭載!「ZIPAIR」国際線4路線にコオロギパウダー使用の料理が登場
※2 食用コオロギパウダーを使用した自社商品2種が売れ行き好調につき、「ファミマ!!」計38店舗に取り扱いを拡大
※3 食用コオロギを使用した自社食品ブランド「C. TRIA」の設立1周年を記念した記者発表会&ゴミ拾いイベントを開催!

株式会社グリラスインタビュー02

なんでもバランス。これからは「海外」に対する指標も

── 多くの方に発信することで、全国での認知が上がったり、共同開発や研究のための資金調達ができたり。でも、徳島での話題を残すというのはすてきですね。

渡邉:なんでもバランスだと思うんです。例えば、次の発展形として海外展開を考えると、世界規模での情報発信みたいなのも必要になってくると思いますし。

私たちは、タンパク質が足りない地域にタンパク質を届けるということを大きなビジョンに向けて動いています。これを達成するには、海外で事業を遂行できる状況をつくらないといけません。そのためには、海外に情報を出して、「ジャパンでこんなことやってるやつがいる」と知ってもらう、まさに広報PR活動をする必要がでてきます。

広報がつくる、事業貢献の流れ

海外展開にも、知ってもらうことが必要

── 海外展開、すでに検討していたり、進めている事業はあるのでしょうか。

渡邉:事業としてはいくつか練っていますが、私たちだけで情報発信しても……と理解しているので、やはりさまざまな企業の方々と共同事業を進めながらですね。また、企業だけでなく、バリューを持っている公的機関と連携して動くのかな、と思っています。

── 少し短期の目標や今後進めていきたいことはいかがでしょうか。

渡邉:より短期なところでは、小売商品を全国展開して誰でも手に取ってもらえるような状況をつくることが最大のポイントになってきますね。川原たちが開催している地方イベントなど含め、ひとりでも多くの人に食用コオロギを知ってもらう。メディア関係者の方々には「この地域にもコオロギの黒船がきた」と取り上げていただく。それらを繰り返して、産業の浸透を図りたいと考えています。

また、「食品ロス」の観点では、廃棄物を出している企業と協業を進めています。まだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品廃棄物をコオロギが食べて、もう一回動物性タンパク質ができる。この点も今以上に知ってもらえるようにしたいですね。

広報の目標は日本中、世界中でコオロギが当たり前になること

── 広報PRの目標や今後進めていきたいことはありますでしょうか。

川原:ひとつの弾けるネタを仕込んでから、それを各地で再現していき、認知を高めていきたいと思っています。これまでに用意したものでいえば昆虫食の合同イベント、エコマッチョ、コオロギの給食導入。ひとつの地域でイベントがPRとして成功すれば、それを全国で展開・再現していくことで低カロリーで認知拡大ができますからね。

そのような何度繰り返してもネタとなるものを企画し、日本中で展開していく。結果的に、「コオロギよく見るよね」「最近、流行っているよね」という評判につながり、事業に貢献する。この流れを広報PRがつくり、日本中、世界中でコオロギが当たり前になっていくようにすることが目標です。

渡邉:私自身が大学の教員で、堅い人間の印象だと思うんです。そんな私がコオロギをすすめる情報を出しても響かないことがあります。そのため、PRウケの良いまじめな情報と、時にはSNSなどでウケるような面白い情報を両軸で出していきたいですね。

株式会社グリラスインタビュー03

起業時から広報PRの注力を決めていた代表取締役社⻑の渡邉さん。注力してきたことでの成果は説得力のあるものでした。また、同じ想いで広報PR活動を行う川原さんの企画力と実行力もまねしたいポイントがたくさん。

これから検討する方も、結果につながらず辞めてしまいそうになっている方も参考になる点が多かったのではないでしょうか。

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この記事のライター

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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