「ガザの子ども 平和に暮らす権利もつ」 ユニセフ事務局長、戦争の終結を訴え 【プレスリリース】

国連安保理会合で発言

ガザ地区南部のハンユニスにある病院で、治療を受ける3歳のハサンちゃん(パレスチナ、2025年6月5日撮影) © UNICEF/UNI812781/Eleyan

【2025年7月16日 ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)事務局長キャサリン・ラッセルが、ニューヨークで開かれた国連安全保障理事会会合において、ガザ地区の子どもたちの人道状況に関する報告を行いました。以下はその要旨です。

* * *

現在の紛争が始まって以来、パレスチナとイスラエルの子どもたちは、ひどい苦しみを味わってきました。子どもは命を奪われ、心に傷を負い、人質に取られています。親を亡くし、けがをした子どももいます。空腹で、清潔な水も不足しています。学校に通えず、安心して過ごせる家は遠い記憶となっています。

ガザ地区

過去 21 カ月間の戦争で、ガザでは 1万7,000 人以上の子どもが

命を落とし、3万3,000 人が負傷したと報告されています。1 日平均 28 人の子どもが亡くなっていることになり、これは 1 クラスの全生徒数に相当します。少し、この事実を考えてみてください。2 年近くの間、毎日 1 クラスの生徒全員が亡くなっているのです。

先週、デルバラハでユニセフの栄養補給物資を待つ列に並んでいた9人の子どもと4人の女性を含む15人のパレスチナの人々が、爆撃により命を落としました。先週末には、飲み水を手にしようとしていた、7人の子どもを含む10人が、空爆により亡くなりました。そして本日、ガザ南部の配給拠点に人が溢れる中、子どもを含む少なくとも 20 人が犠牲になったと報じられています。

家族のために食料を手に入れようと、何時間も歩いて支援物資の配布拠点まで来たところ、空爆によりけがをした17歳のビラルさん(パレスチナ、2025年7月15日撮影) © UNICEF/UNI831489/Nateel

・国連人権高等弁務官事務所によると5月27日から7月7日までの間に、子どもを含む798人のパレスチナの民間人が、食料配給拠点や人道支援物資を運ぶ車列の近くで亡くなったと記録しています。彼らは民間人で、食料を必死に探し求めていました。

ヨルダン川西岸地区

・同時に、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区の情勢も著しく

悪化しています。今年に入ってから、軍事作戦や入植者による攻撃により、パレスチナの子ども33 人の命が奪われました。住宅や道路の破壊、人口密集地域における爆発性兵器の使用が続く中、3万2,000 人以上の人々が避難を余儀なくされています。

・さらに、治安に関する罪を犯した疑いで拘禁されている、ヨルダ

ン川西岸地区出身のパレスチナの子どもの数は、過去7年間で最高水準に達しています。この中には、起訴も裁判も受けていない状態で、行政拘禁命令により拘禁されている子ども120人が含まれています。

ヨルダン川西岸地区にあるヌルシャム難民キャンプから避難をする家族(パレスチナ、2025年7月15日撮影) © UNICEF/UNI831447/Badarneh

・戦争が始まる前ですら、ガザの子どもの半数はメンタルヘルスと心理面でのサポートを必要としていました。今では、ガザのすべての子どもがこうしたサービスを必要としています。

ガザ地区の子どもの状況

・ガザの子どもは深刻な食料不安や栄養不良に陥るなど、悲惨な生活状況に耐えています。6月に栄養不良の検査を受けた11万3,000人以上の子どものうち、6,000人近くが急性栄養不良と診断されました。これは、2月と比較して180%増という驚異的な増加を示しています。これら重度の栄養不良に陥っている子どもには、命をつなぐために、安全な水と医療、そして一貫した管理下の治療が必要です。

・水の製造能力が劇的に低下した結果、ガザの 95% の家庭で十分な水を利用できなくなっています。清潔な水へのアクセスがますます難しくなる中、子どもは汚染された水を飲むしか選択肢がありません。これにより感染症が集団発生するリスクが高まり、今や、保健医療に関する相談の 44% を水系感染症に関するものが占めています。

ガザ地区南部のハンユニスにあるユニセフ支援の診療所で、栄養不良の治療を受ける1歳のアスマーちゃん(パレスチナ、2025年5月25日撮影) © UNICEF/UNI804917/El Baba

・5歳未満の子どもの下痢症や呼吸器感染症の症例が増え続けています。また、ここ数日、ガザで活動するユニセフのチームは髄膜炎の集団発生に対応しており、多くの乳児が重篤な症状を呈しています。

・何千人もの子どもが緊急の医療支援を必要としています。かろうじて機能している病院はひっ迫しており、救急部門がフル稼働し、病床の稼働率が 100% を超えています。これらの施設には、必要な医薬品や燃料が著しく不足しており、救命医療が妨げられ、暗がりで手術をしなければならないこともあります。新生児の救命医療へのアクセスは 70% 近く減少しています。

・重傷を負っている、慢性疾患を抱えている、あるいは複雑な病状のある患者が少なくとも 1万2,500

人おり、その中には何千人もの子どもが含まれています。しかし、ガザからの患者を受け入れている国はごくわずかであり、その結果、防ぐことのできたはずの死がさらに増えています。

ガザ地区への物資の搬入

・約11週間にわたって支援物資の搬入が全面封鎖された後、当局は5月中旬からごくわずかな国連の物資をガザ地区に搬入することを認めました。しかし、これではまったく足りません。5月19日から7月2日までの間、当局は指定された検問所で、1日平均30台の国連のトラックによる支援物資の搬入を認めました。その中にはユニセフの栄養に関する物資、水処理用品、ワクチンが含まれていました。

・しかし、1日当たりトラック30台では、200万人の人々が命をつ

なぐために必要な物資のほんの一部しか届きません。私たちは、子どもや家族の緊急ニーズに応えるために、ガザ地区への人道支援物資の搬入と地区内の搬送を、十分なスピードと規模で行うことを認めるよう、当局に引き続き要請していきます。

支援物資の配布場所に集まるガザの住民たち。水や食料を求めて何時間もかけて歩いてくる人々も多いが、物資は圧倒的に不足している(パレスチナ、2025年7月7日撮影) © UNICEF/UNI827072/El Baba

・必要な支援物資には燃料も含まれます。戦争勃発以来、電力が遮断されているため、ガザ地区内では病院の発電機、救急車、製パン所、水道・衛生施設、通信ネットワークなど、あらゆるものの稼働が燃料に依存しています。いま、深刻な燃料不足により重要なサービスが停止し、100万人以上の子どもの命が危険にさらされています。命を守る活動を維持するために、ガザへ十分な量の燃料が継続的に搬入されることが認められなければなりません。

・3月の停戦期間中、私たちは効率的かつ安全な形で支援を行いました。その支援には、ガザ全域の400以上の配布拠点を通じて提供された、必須のワクチンと新生児ケア、命を守る栄養サービス、および清潔な水などが含まれていました。ユニセフとそのパートナーは、そこからさらに一歩進み、栄養不良の子どもや避難所で暮らす妊婦に、戸別に支援物資を届けました。

子どもの保護を訴え

・私たちはすべての紛争当事者に、子どもを保護するための即時行動を求めます。イスラエルに対しては、特に子どもを含む民間人の保護について、国際人道法を完全に遵守するよう交戦規定を早急に見直すとともに、事件や違反の疑いについて徹底的かつ独立した調査を行い、責任の所在を明らかにするよう求めます。

・そして、安全で迅速かつ妨げられることのない人道アクセスを含

む、民間人の生存とウェルビーイングを担保するための法的義務をすべての紛争当事者が遵守するよう呼び掛けます。

ガザ地区北部にある破壊された病院(パレスチナ、2025年6月10日撮影) © UNICEF/UNI818147/Eleyan

・ハマスおよびその他のパレスチナ武装組織に対し、民間人に必要な施設を尊重し、妨げのないアクセスを容易にすることを含め、国際人道法を遵守するよう求めます。彼らは、ガザ地区内に拘束しているすべての人質を即時かつ無条件で解放すべきです。

・すべての紛争当事者は直ちに停戦に合意すべきです。安保理に対し、人々の苦悩の軽減とこの戦争の終結に向け、利用可能なすべての手段を講じるよう強く要請します。最後に、すべての加盟国に対し、この紛争を緩和するために、この間にあらゆる影響力を活用するよう要請します。

すべての子どもは平和に暮らす権利がある

子どもは政治の担い手ではありません。紛争を起こす力も、紛争を止める力もありません。それにもかかわらず、子どもたちは大きな苦しみを味わっており、なぜ世界はぼくたち・わたしたちを見捨てるのか、と疑問を抱いています。そして間違いなく、私たちは彼らを裏切っているのです。

ガザの子どもには、世界中の子どもと同様に、平和に暮らす権利があります。 私たちの仕事は、子どもたちにふさわしい未来を与えることです。とにかく、より一層の取り組みが必要なのです。

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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