PR TIMES MAGAZINE|広報PRのナレッジを発信するWebメディア
記事検索
title

グループ広報・ホールディングス広報とは?全体戦略を見直す広報体制と発信力のつくり方

複数の事業会社を抱える企業グループにとって、企業価値の向上とリスク管理の要となるのが「グループ広報・ホールディングス広報」です。グループ全体の価値の最適化からESG対応、ブランド強化、リスク管理まで幅広い課題に向き合ううえで、グループ広報の視点が欠かせません。

一方で、いざ体制を強化しようとしても「何から始めたらよいのかわからない」と悩む担当者も少なくないのが現状です。本記事では、実際の事例や体制づくりのポイントを交えながら、広報PR担当者が今見直すべき全体戦略のヒントを紹介します。

目次
  1. グループ広報・ホールディングス広報とは?

  2. グループ広報・ホールディングス広報の主な役割

  3. グループ広報・ホールディングス広報が注目されている背景

  4. グループ広報・ホールディングス広報の体制の種類

  5. グループ広報・ホールディングス広報で制定する5つの項目

  6. グループ広報・ホールディングス広報におけるプレスリリース活用のコツ

  7. グループ広報・ホールディングス広報の事例

  8. グループ広報・ホールディングス広報を成功に導く3つの実践ポイント

  9. まとめ:ガイドラインをグループ全体に浸透させて、グループ・コーポレートブランドの向上を

グループ広報・ホールディングス広報とは?

グループ広報・ホールディングス広報には、複数の事業会社を持つ企業グループ全体のブランド価値や評判を戦略的に統括する役割があります。関連会社がそれぞれ広報活動を行うだけでは、グループとして一貫したメッセージを発信したり、危機対応したりすることが難しくなります。そこで、グループ全体をまとめる「司令塔機能」がカギとなります。

また、ESGやSDGsといった社会的課題への対応やグローバル戦略の推進など、グループ全体の方向性を示すのもグループ広報の機能のひとつ。各社の自主性を尊重しつつも、グループとしての広報PR戦略を再構築することで、相乗効果を生み出し、企業価値を高める体制づくりが重要です。

グループ広報・ホールディングス広報の主な役割

グループ広報は、情報発信の統括機能にとどまらず、ブランド価値の最大化やリスク対応の一元化など、幅広い役割を担います。グループ広報が果たす具体的な役割と、企業活動に与える影響は以下の通りです。

  • 統一されたブランドイメージを構築し、企業価値を高める
  • 情報発信のガバナンスを整え、経営リスクを低減する
  • 危機発生時の迅速かつグループ全体で統一した対応を可能にする
  • グループ全体のストーリーを描き、ステークホルダーとの共感を深める
  • グループシナジーを可視化し、対外的な魅力を高める
  • 広報人材を育成し、グループ全体の広報力を底上げする
  • メディアとの関係を築き、掲載の機会を広げる

こうした役割を実践する企業の取り組みとして、株式会社日比谷花壇の事例があります。同社では、グループシナジーを見える化するため、毎月1回、各事業部とグループ会社の広報委員数十人が参加する「広報委員会」を実施。連携して発信数を増やすことに注力し、その結果、前年比で2倍以上のプレスリリース配信を実現しています。

詳細はインタビュー記事をご覧ください。

グループ広報・ホールディングス広報が注目されている背景

サステナビリティや人的資本、ガバナンスといった非財務情報の開示が企業価値に直結する時代において、企業グループ全体で一貫したメッセージを発信することが求められています。各会社がバラバラに対応するだけでは、ESG評価やステークホルダーの信頼に応えるのは困難。このような状況でグループ広報を実施することには、次のようなメリットがあります。

  • ESG評価やステークホルダーの信頼に応えられる
  • サステナビリティ戦略や人的資本投資の姿勢を可視化できる
  • 統合された価値創造ストーリーを構築できる

軸のある一貫したメッセージや情報の発信こそが、ステークホルダーからの信用を高める大切な要素。グループ広報に求められる重要な役割といえるでしょう。

グループ広報・ホールディングス広報の体制の種類

グループ広報の体制は、企業の規模や事業特性によって異なります。本社集中型から分散型、ハイブリッド型まで、代表的な3つの体制と特徴を整理します。

完全集中型(グループ広報・ホールディングス広報主導)

本社に広報PR機能を集約し、統括するのが完全集中型です。主な特徴は以下の通りです。

  • グループ全体のブランド戦略から危機管理まで一元的に担う
  • 企業理念やパーパスの一貫性を重視するグループに適している
  • 広報発信のスピードと品質を高めやすい
  • ガバナンスや情報統制の観点で優位性がある

メッセージやブランドの統一感を保ち、トップダウンでの情報発信をスムーズに行える点が強みです。

子会社分散型(各社独立運用)

各関連会社が独自に広報PR活動を行うのが子会社分散型です。ホールディングスの関与は最小限にとどまります。特徴は次の通りです。

  • 製品やサービス、ターゲット市場が大きく異なるグループで多く見られる
  • 各社が自社の戦略やタイミングに応じて発信できる
  • 子会社の自主性や柔軟性が高まる
  • ローカルニーズへの対応が迅速に進む

一方で、ブランドの統一感や危機対応の迅速性に課題が残ります。そのため、一定のガイドラインや連絡網を設け、リスク分散と連携のバランスを取ることが大切です。自律性を重視しつつも、広報PR力のばらつきを防ぐ工夫が求められます。

ハイブリッド型

ハイブリッド型は、本社と関連会社が役割を分担し、広報PR機能をすみ分ける体制です。特徴として以下が挙げられます。

  • 全社的な危機対応は本社、ローカルメディア対応は関連会社など、テーマごとに分業する
  • 情報共有体制を整えることで、統一性と多様性の両立が可能になる
  • ブランド価値を守りつつ、各事業の個性も活かせる
  • 多様な関連会社を抱える企業で導入が進んでいる
  • ホールディングスが支援に徹するサポート型もある

コアメッセージを統一しつつ、地域や事業ごとに合わせた広報PRが可能です。広報PRの質やスピード、一貫性をバランスよく高めたい企業に適した体制といえます。

グループ広報・ホールディングス広報で制定する5つの項目

グループ全体の発信力を高めるには、体制やルールの整備が不可欠です。ここでは、戦略的に取り組みたい5つの基本項目をご紹介します。

体制やルールの整備 イメージ

情報収集・発信の連携体制を整える

グループ広報では、各関連会社からの情報をタイムリーかつ正確に収集し、必要に応じてグループ全体で発信できる仕組みづくりが重要です。そのためには、広報PR担当者ネットワークの整備や定例の情報共有会議に加え、社内イントラ、チャットツールを活用したリアルタイム連携が役立ちます。

さらに、情報の重要度に応じてホールディングスが調整や編集を行える体制を用意することで、スピードと質の両立が可能に。縦と横を結ぶ情報流通基盤が、グループ広報の土台となります。

グループブランドのガイドラインを制定する

グループ企業間でブランドに対する認識やメッセージの伝え方に差があると、外部への印象が分断され、企業価値を損なう恐れがあります。そのため、コーポレートロゴやスローガンの使用規定、ブランドカラーや書体といったビジュアルアイデンティティを明文化したガイドラインを策定し、各社に浸透させることが欠かせません。

関連会社ごとの自由度を認めつつも、コーポレートアイデンティティを統一することで、グループ全体としての「ブランドの人格」を形づくることができます。

メディア対応に一貫性をもたせる

発言のスタンスにばらつきがあったり、関連会社ごとに温度差があったりすると、グループ全体の信頼を損ねかねません。そこで、発言権限の明確化や取材対応マニュアルの整備、記者会見・発表資料の標準化を通じて、一貫した方針を示すことが大切です。

また、関連会社との事前共有や調整フローを設けることで、想定問答や公式コメントもスムーズに準備可能に。全社で一枚岩となった対応につながります。報道対応の質とスピードを底上げするには、日ごろからの連携体制がポイントです。

リスクコミュニケーション体制を整える

グループ全体で潜在リスクを可視化し、共有・予防の仕組みを整える必要があります。ホールディングス主導で、事実確認や説明資料作成の流れを平時から整理しておくのも有効でしょう。

こうした準備により、社内連絡網や情報伝達ルートをあらかじめ整備でき、迅速な説明対応につながります。特に重要なのは、「どのレベルのリスクを誰が説明するのか」という判断基準を明確にしておくこと。従業員・取引先・地域といった関係者と定期的に対話や情報提供を重ねることで、信頼関係を育んでいけます。

グループ共通の年間広報スケジュールを作成する

同じグループ内での発表が重なったり、ステークホルダーへの説明が混乱したりするのを防ぐため、グループ広報は「発信の交通整理役」として年間の広報スケジュールを作成します。

プレスリリースやニュース発表のタイミング調整、重大発表の事前共有、業績発表やESG報告などの優先順位づけをルール化することがポイントです。また、各社の発表内容がグループ全体の文脈と矛盾しないよう、精査や事前承認のプロセスを設けることで、整合性の取れた発信が可能になります。

たとえば、自動車・軸受・工作機械を主軸に製造産業を営む株式会社ジェイテクトでは、プレスリリース計画を可視化。各事業部が「発表したい製品」と「配信時期」の希望を資料にまとめ、上層部に報告する仕組みを整えています。こうした体制により、実際の発表までスムーズに進められる環境を実現しています。

詳しい取り組みは、以下のインタビュー記事で紹介しています。

グループ広報・ホールディングス広報におけるプレスリリース活用のコツ

グループ広報にとって、プレスリリースはグループ全体の価値や一体感を示す大切なツールです。その効果を最大化するために、押さえておきたいポイントを紹介します。

グループ全体で一体感を保つ

グループ広報では、戦略や価値を踏まえた発信を意識し、プレスリリースを「グループの一体感やシナジーを示す手段」として活用することが重要です。横断的な施策を発表する際は、ホールディングス視点での統一メッセージや代表コメントを明示し、中期経営計画やグループ理念との関連を添えると、全体としての意志を明確に伝えられます。

また、発信のタイミングや構成を各社と連携して調整することで、話題の集中や情報の分散化を防止。さらに、関連会社の情報に加えてグループ全体像を示す解説資料を添付すれば、ニュースとしての価値も一層高まります。

ガイドラインを整備する

関連会社が多いグループでは、プレスリリースのルールや文書品質に差が出やすく、ブランドイメージを損なうリスクがあります。そのため、作成から配信までの流れを定めたガイドラインを整備し、社内教育や承認フローに組み込むことが欠かせません。

見出しの付け方や企業名の表記順、引用・画像利用のルールなどを明文化し、共通基準として展開しましょう。あわせて配信後のレビュー制度を設ければ、実務担当者のスキルアップにもつながります。

グループ広報・ホールディングス広報の事例

グループ全体の広報力を高めるには、各社の特色を尊重しつつ方向性をそろえる姿勢が求められます。ここでは、そんな工夫を実践しているグループ広報・ホールディングス広報の事例を紹介します。

事例1.パーソルホールディングス株式会社

グループ各社の広報PR担当者、総勢30名と連携しながら活動を展開。

  • メディアが関心を持つテーマを引き出し、重点情報を発信
  • 社内勉強会を通じてメディア視点を共有し、情報の質と量を強化

事例2.株式会社古窯ホールディングス

経営理念を軸に、ミッション・ビジョンだけでなくクレドや事業計画、日々の行動計画まで再定義。

  • プレスリリースを「指示書」として活用し、地域貢献度や目指す方向性を明示
  • 多角的な事業展開が認知され、採用にもつながる成果を獲得

事例3.株式会社昭文社ホールディングス

広報PRと販促部門が役割を分担し、ファンづくりと購入導線を両立。

  • 「地図」「防災」「地域貢献」を軸にCSR活動を発信
  • プレスリリースを通じてメディアや業界紙から幅広い反響を獲得

事例4.東洋製罐グループホールディングス株式会社

総務部に「サステナビリティ推進部」を新設し、広報PRを強化。

  • 環境への配慮や社会性の高さを意識し、業界のリーディングカンパニーとして発信
  • 社内にも取り組みの意義を共有し、共感を醸成

事例5.株式会社パルグループホールディングス

「全員広報」という発想で、店舗スタッフが積極的に情報発信。

  • 1,900人のスタッフをインフルエンサー化し、総フォロワー数は2,200万人に到達(2025年6月時点)
  • 成果を数字で可視化し、インセンティブ制度を導入することで、継続的な体制を構築

グループ広報・ホールディングス広報を成功に導く3つの実践ポイント

グループ広報の成果は、戦略・連携・危機対応という土台づくりにかかっています。ここでは、広報PR担当者がすぐに取り入れられる3つの視点を紹介します。

ポイント

ポイント1.「伝える価値」を定義する

各社が個別に語るだけでは十分に伝わらない「全体としての価値」を明確にすることが欠かせません。製品やサービスの紹介にとどまらず、「なぜこの事業群が存在するのか」「社会にどのような共通価値を提供しているか」を、統一した言葉で示すことが大切です。

そのためには、グループ広報が経営戦略やサステナビリティ方針を理解し、それを起点に「価値の編集」をして発信する視点が求められます。

ポイント2.関連会社の特性を活かした連携を促す

グループ広報には、統一性を保ちつつも、各社の業種や文化、発信ニーズの違いを尊重する柔軟さが必要です。ホールディングスは「統制者」ではなく「ファシリテーター」として、発信を支援し相互連携を促すことが重要です。

具体的には、広報PR担当者同士が学び合う定例ミーティングや、好事例を共有できる広報ポータルの設置が効果的。横のつながりが強まれば、グループ全体の広報力が有機的に高まり、発信の一体感につながります。

ポイント3.初動ルールを明文化する

グループ広報の真価は、平時よりも有事にこそ問われます。1社のトラブルが他社やグループ全体に広がるリスクを踏まえ、情報共有ルートや判断権限、外部対応の分担を定めた「グループ危機対応マニュアル」を整備しておきましょう。

さらに、横断的な訓練やシミュレーションを定期的に実施することで、対応スピードと判断の精度を高められます。迅速かつ冷静に指揮をとる司令塔としての体制づくりがカギを握ります。

まとめ:ガイドラインをグループ全体に浸透させて、グループ・コーポレートブランドの向上を

グループ全体の方向性を定めるグループ広報では、各関連会社の主体性を尊重しながら、グループとしての広報PR戦略を検討することが欠かせません。そのためには、プレスリリースの配信ルールや共通メッセージなどのガイドラインを策定し、浸透させていくことが重要です。

今回ご紹介した事例やポイントを参考に、自社グループの規模や事業特性に合った形で取り入れてみてください。全体で相乗効果を生み出すことで、グループ・コーポレートブランドの価値をさらに高めていけるはずです。

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする

この記事のライター

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

このライターの記事一覧へ